産婦人科での接遇研修の事例について 【ガイアシステム・岡本講師】

研修講師として多くの現場に携わってきた、弊社研修講師・岡本に、これまでの研修の中で「特に印象に残っている研修」について話を聞きました。

数ある研修の中から語られたのは、ある産婦人科クリニックで実施した接遇研修の事例です。
医療という、命と向き合う現場だからこそ生まれた葛藤や工夫、そして、時間をかけて積み重ねてきた現場の変化について、岡本自身の言葉で振り返ってもらいました。

本記事に回答した研修講師
研修講師 岡本

岡本 好市
株式会社ガイアシステム 研修事業部長
現場に寄り添った対話型の研修を強みとし、受講者の行動変容につながるプログラム設計を行っている。また、NPO法人の職員も兼務し、災害支援の分野にも継続的に携わっている。

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命を守る現場だからこそ、大切にしたかったこと

研修講師として活動してきた中で、印象に残っている研修は正直いくつもあります。
「印象に残っている研修」も、正直いくつもあるので選ぶのが難しいのですが…ある産婦人科での「接遇研修の事例」をお話させてください。

「産婦人科で接遇研修?」と思われるかもしれません。そう思われる方もいるかもしれません。

今回ご相談をいただいた背景には、命を守る現場だからこそ、スタッフ一人ひとりが誇りを持ち、患者さんに想いをもって寄り添える病院でありたいという、クリニック側の強い想いがありました。

ですが、実際に研修を進めるにあたり、いくつかの課題がありました。

医師や看護師の方々は、言うまでもなく医療の専門家です。
「接客」を目的に職業を選ばれたわけではなく、日々、「命」を最優先に真剣に業務に向き合っておられます。

そのため、医療現場での「接遇研修」は、受け止め方や意識づくりの面で、簡単ではない挑戦でした。

これまで成果につながらなかった研修の背景

このクリニックでは、過去5年間にわたり、他社の研修会社による「座学中心の研修」や「マニュアル整備」が行われていました。

研修そのものが無意味だったわけではなく、必要な知識や考え方は、一定程度共有されていたと思います。
しかし、日々の忙しい業務の中で、学んだ内容が実際の行動や現場の変化にまで落とし込まれることは、決して簡単ではありませんでした。

結果として、
「研修で聞いた内容は理解しているが、現場ではどう活かせばいいのか分からない」
「結局、これまでと同じやり方に戻ってしまう」

といった状況が続いていたようです。

こうした背景から、知識を学ぶだけで終わる研修ではなく、現場での行動や意識の変化につながる研修を実施したい
という思いが、今回のご相談につながっていました。

「どんな病院でありたいか」を、現場と共に考える研修

産婦人科 接遇研修の事例


そこで私たちは、アプローチそのものを見直しました。
一方的に考え方や方法を伝える研修ではなく、グループワークやロールプレイを中心とした、実践を通じて考える研修を、2年間にわたって継続的に実施することにしました。

研修の場では、「正解」を提示することよりも、
現場で働く一人ひとりが、自分の言葉で考え、話し合う時間を大切にしました。

日々の業務の中で感じていることや、迷い、葛藤も含めて言葉にし、それをチームで共有するところから、研修を進めていきました。

研修を重ねる中で、少しずつ変化が生まれていきました。
スタッフ同士が
「自分たちは、どんな病院でありたいのか」
「患者さんに、どんな気持ちで帰ってもらいたいのか」
といった理想像について、自然と語り合うようになっていったのです。

こうした対話を通じて、
接遇やコミュニケーションは「やらされるもの」ではなく、
自分たちが目指す病院像を実現するために必要なものだ、
という認識が、少しずつ共有されていきました。

時間をかけて現場と向き合い、考え、試し、振り返る。
その積み重ねが、次の行動や変化につながっていきました。

「選んでよかった」と思ってもらえる病院へ

研修の中で何度も話題に上がったのが、「この病院で出産できて良かった」「ここを選んで本当に良かった」と、患者さんに思ってもらえる病院でありたい、という想いでした。

研修当時は、コロナ禍で出産時にご家族が分娩室に入れない状況でもあり、患者さんやご家族の不安がより大きい時期でもありました。

だからこそ、
「些細なことでも、気軽に相談してもらえる存在でありたい」
「患者さんが、遠慮なく声をかけられる雰囲気をつくりたい」
といった想いが、現場から自然と語られるようになっていきました。


こうした想いを、ただの理想で終わらせるのではなく、

「そのために、自分たちは何ができるのか」
「日々の行動で、どこを変えられるのか」
を、

スタッフ同士で話し合い、具体的な行動レベルへと落とし込んでいきました。

行動を変えるための、実践トレーニング

産婦人科 接遇研修の事例

研修では、
・患者さんの話の聴き方(傾聴力)
・院内での立ち居振る舞い

・忙しい状況でも、患者さんの前ではせかせかせず、歩くスピードを意識すること
など、一見すると些細に思えるような点にも目を向けました。

これらを、ロールプレイングを通して繰り返し体験し、
自分たちが描く理想の姿に、どうすれば近づけるのかを確認していきました。
「知っている」だけで終わらせず、実際の場面を想定しながら、体を動かして試すことを大切にしたのです。

「どうすれば、より理想に近づけるのか」
「今の行動は、患者さんにどう映っているのか」
そうした問いを持ちながら、自分たち自身で考え、実践し、振り返る。

その積み重ねが、少しずつ現場の雰囲気や、スタッフ同士の意識を変えていきました。

現場が自ら動き出し、組織として成長していった

研修で学んだことを、日々の現場で一つひとつ実践していく中で、接遇の質は着実に高まっていきました。
特別なことを急に始めたわけではありませんが、患者さんへの向き合い方や、スタッフ同士の声かけ、院内の雰囲気に、少しずつ変化が表れていきました。

そうした積み重ねの中で、次第に「自分たちで研修を企画し、運営してみたい」という声が、現場から自然と上がるようになったのです。

研修を受ける側だったスタッフが、「どうすれば、もっと良くなるか」を自分たちで考え、動き始める。
その姿は、接遇力が高まっただけでなく、組織としてのあり方そのものが変わり始めていることを感じさせるものでした。

その後、このクリニックは外部からも注目され、他の産婦人科が見学に訪れるまでになりました。
それは、特別な仕組みを導入したからではなく、現場一人ひとりが、自分たちの病院を良くしたいという思いを持ち、行動を積み重ねてきた結果だと感じています。

研修開始当初と比べると、まるで別の組織のように成長されており、その変化を間近で見られたことは、私自身にとっても大きな学びであり、喜びでした。

この研修は、「人が変われば、現場が変わる」そして「現場が変われば、組織は自発的に動き出す」ということを、改めて実感させてくれた、忘れられない取り組みの一つです。

研修データ

研修概要 ・接遇研修・コミュニケーション研修・リーダー研修
受講者数 ・50名
導入期間 ・24カ月
業界・職種 ・医療/病院(産科 婦人科 小児科)
強化項目 ・接客接遇・コミュニケーション能力・報連相談・傾聴力
 ・理念浸透・ホスピタリティ・チームビルディング

講師プロフィール

岡本 好市(おかもと こういち)

ガイアシステム 岡本講師

企業向け研修では、チームビルディング・コミュニケーションプログラムを主に担当し、業種・業界・階層問わず年間約100回以上の研修を実施。企業内での研修カリキュラムの仕組み構築や研修トレーナーの育成、新卒採用強化のコンサルタントとしても活躍している。

情熱を持って受講者に接し、モチベーション向上と前向きな行動変容を促せるよう研修を展開。顧客に寄り添い、成長をサポートする熱意あふれる指導者として多くの支持を得ている。

研修講師 岡本

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