「やっているのに進まない」仕事の正体― 目的が多い仕事は、必ず迷子になる。

「頑張っているのに、手応えが感じられない。」

新しい役割や業務を任されたとき、このような感覚を抱いたことがある方も多いのではないでしょうか。やるべきことはこなしているのに、自分の仕事が成果につながっているのか分からない――そんな状態に陥ることがあります。

本コラムでは、研修現場での実際のやり取りをもとに、仕事の成果を左右する「目的の設定」について考えていきます。何のためにその仕事を行うのか。その問いが、仕事の進め方や成果の見え方を大きく変えるかもしれません。

メニュー

その仕事、“何のために”やっていますか?

ある企業の研修で、このようなご相談をいただきました。

「2ヶ月前から販促担当になったのですが、正直、自分の動き方がよく分からなくて……」

お話を伺うと、新商品のポスターを作成し、店内に掲示しているとのことでした。
ただ、その後に続いた言葉が印象に残りました。

「貼ってはいるのですが、これでいいのか分からないんです。
そもそも、この取り組みに効果があるのかも判断できていなくて……」

真面目に取り組んでいる。
やるべきこともやっている。

それでも、手応えが感じにくい。

現場では、決して珍しい状態ではありません。

問い一つで、仕事の見え方は変わる

そこで、一つシンプルな問いをお返ししました。

「そのポスターは、何のためにやっているのでしょうか?」

少し考えながら、いくつかの目的が挙がりました。

  • 認知を広げたい。
  • 幅広い層に買ってほしい。
  • 口コミで新規顧客につなげたい。
  • 店舗の活気もつくりたい。

どれも間違いではありません。
むしろ、どれも重要です。

ただ、その中に一つ、見落とされがちな構造があります。

目的が多い仕事は、必ず迷子になる

一つの仕事に、複数の目的が入る。
これは現場でよく見られる状態です。

一見すると前向きで、意欲的にも映ります。
ただ、実務の観点では少し注意が必要かもしれません。

なぜなら、

目的が違えば、正解が変わるからです。

来店客の購買を増やすのか。
口コミで新規を増やすのか。

同じ「ポスター」という施策でも、

・見るべき数字
・考えるべき打ち手
・評価の基準

すべてが変わります。

こうした前提が曖昧なまま進んでしまうと、
動いているのに、進まない。

という状態に入ります。

「分析できない仕事」は、改善できない

仕事は、

実行 → 分析 → 改善 → 再実行

このサイクルをどれだけ回せるかで、成果は変わります。 

ただし、前提があります。

分析できる状態であること。

目的が複数ある状態では、

・何が良かったのか分からない
・何が悪かったのかも分からない
・次に何を変えるべきかも見えない

結果として、

「頑張っているのに、前に進まない」

という感覚だけが残ります。

なぜ“迷子”は起きるのか

今回の受講者の方も、こう振り返っていました。

「前任者のやり方もあって、上司の意見もあって、自分なりの工夫も入れて……全部を中途半端に目的にしてしまっていました」

このような状態は、特別な話ではありません。 

・これまでのやり方を踏襲する
・上司の意向にも応えたい
・自分なりの工夫も加えたい 

その結果として、

誰のための仕事か、何のための仕事かが、曖昧になっていく。

そうしたことは、多くの現場で起きているのではないでしょうか。

目的は「一つ」に絞る。それだけで仕事は進み出す

今回のケースでお伝えしたのは、一つだけです。

「まず、一番狙う目的を決めましょう」

副次的な効果はあっていい。
ただし、最優先は一つに絞る。

これだけで、仕事は変わります。

・ターゲットが明確になる
・評価の軸が決まる
・次の一手が見える

そして結果として、迷いも少しずつ減っていきます。 

完璧な正解より、「試せる仮説」を持つ

目的が定まったあと、その方はこうおっしゃっていました。

「まずは、来店されているお客様の購買を増やすことに集中してみます」

ここまで整理されると、次の行動も見えてきます。

どのようなお客様が多いのか。
どのような動線で店内を見ているのか。
どこに配置すると目に入りやすいのか。

仮説を立て、試してみる。
結果を見て、また考える。

この繰り返しです。

多くの仕事に、最初からの正解はありません。
だからこそ、精度ではなく、回転が重要になるのではないでしょうか。

おわりに|迷いをなくす、たった一つの方法

新しい役割に就いたとき、
「何をすればいいのか分からない」と感じることは珍しくありません。

ただ、その状態が続くかどうかは、別の問題です。

多くの場合、原因はシンプルです。

目的が多すぎる。

全部を取りにいこうとすると、すべてが曖昧になります。

まずは一つ。
一番取りたいものを決める。

そして、そこに集中する。

その上で、試し、振り返り、また試す。

そうしたシンプルな積み重ねが、
結果として成果につながっていくのではないでしょうか。

この記事を書いたのはー

青木 佑介(Yusuke Aoki)

株式会社ガイアシステム 専務取締役
With+ウィズタス 教育研修事業 事業統括責任者
エグゼクティブコンサルタント

大学時代は、心理学・リーダーシップ論を専攻、2006年新卒で入社。人材総合コンサルタントとして、派遣・紹介・社員採用を通じた様々な企業サポートに従事。入社2年で50名が所属する大阪支社副責任者に抜擢。2008年、同グループのNPO法人の立上げに携わり、ソーシャルビジネスや企業CSRのコンサルタントとしても活躍。2009年、神戸本社にて教育事業部を立ち上げ、事業部の責任者を担いながら、自身も人財育成・組織マネジメントコンサルタントとして、年間100社、2000名、延べ約1万2千人の人材育成に携わる。自身の実体験から見出されたリーダーシップ論、組織マネジメント論は、数多くの経営者・リーダーから支持を受けている。最近では、従来の研修ベンダー会社では対応できない、企業の幅広いニーズに応え、社会のリーダーの輩出に数多く寄与する。2019年より同社専務取締役に就任。2020年同グループ会社である株式会社ガイアサイン専務取締役に就任。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

メニュー