高市早苗総裁就任で考える「ワークライフバランス」の本質とは?

先日、高市早苗・前経済安保担当大臣が自民党総裁に就任し、「ワークライフバランスについて」と語ったことが大きな話題となりました。今回は、弊社代表(株式会社ガイアシステム代表取締役社長の上本修二)に、ワークライフバランスの本質について話してもらいました。皆さんも、ぜひ一緒に考えてみませんか?
総裁就任で注目された言葉「ワークライフバランス」
2025年10月4日、自民党総裁選で高市早苗・前経済安保担当大臣が第29代総裁に選出されました。
女性として初の自民党総裁の誕生に、日本中の注目が集まり、時代の転換点を象徴する出来事として、多くのメディアでも大きく報じられています。
そんな高市氏の就任スピーチの中で、特に印象的だったのが「私はワークライフバランスを捨てて、働いて、働いて、働いて、働きます」という一言でした。「働き方改革」や「多様な生き方」が重視される時代にあって、この言葉は賛否両論を呼びました。
「ワークライフバランスを捨てる」とは、果たしてどういう意味なのか――。
仕事と私生活の調和を大切にする風潮が広がる中で、あえてそのバランスを“手放す”という発言は、多くの人に問いを投げかけています。
私自身も、「ワークライフバランスについて」を改めて考えてみたいと思います。
ワークライフバランスとは
そもそも「ワークライフバランス」とは何を意味するのでしょうか。
一般的には、「時間を管理する」「仕事と私生活のバランスを取り、両立させること」と説明されます。
働く時間と休む時間、家庭や趣味などのプライベートな時間とのバランスを保ち、どちらかに偏らないようにする。
これは、働く人が心身ともに健康であり続けるために欠かせない考え方です。
近年では、企業も積極的に「ワークライフバランス推進」を掲げ、テレワークや時短勤務、休暇制度の充実などに取り組んでいます。こうした流れは、長時間労働や働きすぎを是正し、誰もが安心して働ける社会をつくるうえで、大きな一歩といえるでしょう。
ワークライフバランスの本質
私が考えるワークライフバランスの本質は、「時間の配分」や「管理」ではありません。
ワークライフバランスの本質とは「仕事も(プライベートの時間:仕事以外の時間)も、自分にとって、そして周りの人にとって幸せで、楽しく、充実感、やりがいを持って過ごせること」ではないでしょうか。
その点にこそ、ワークライフバランスの原点、本質があると思うのです。
仕事をしている時も家庭や仲間と過ごす時も、どちらも充実した時間である状態をどう実現できるか。
そして自分は、どのような生き方・働き方を選ぶべきなのか。
それらを見つめ直すことこそが、ワークライフバランスを考えるうえでの出発点であり、
この考え方が抜け落ちたまま、「時間管理」や「働く・休むのバランス」だけを議論しても、本末転倒だと感じます。
なぜならば、私たちの人生の中で、仕事に費やす時間は圧倒的に多いからです。
1日の大半を仕事に費やす私たちは、「仕事をする時間」をどう価値づけしていくのか。
大切な問いになってきます。
仕事の時間をどう“価値づけ”するのか
「お金を稼ぐためだけ」に仕事をすることで、本当に幸せになれるのか?
これは、私自身が自問し続けてきたテーマでもあります。
今の社会には、「今だけ」「自分だけ」「お金だけ」といった拝金主義的な価値観が少なからずあります。
しかし、本来の“働く”という営みは、誰かを幸せにし、社会に貢献するためのものであるはずです。
利他の実践―仕事の価値を再定義する
これは、稲盛和夫氏の「利他」という考え方にも通じるものがあります。
仕事とは、自分ではない誰か。
職場の仲間、お客様、家族を喜ばせ、幸せにするために行うもの。
その結果として、自らも幸せを実感できるようになる。
この循環こそが、人生の中で最も豊かなバランスをもたらすのではないかと思うのです。
「今だけ」「お金だけ」「自分だけ」という価値観のもとで働いてしまうと、
人の役に立つ喜びや、人を幸せにする実感を得られないまま、時間だけが過ぎていってしまう。
それはとてももったいないことだと感じます。
幸せの基準を自分の中に持つ
ワークライフバランスとは、単に“働き方”の話ではなく、「生き方そのもの」を問うテーマだと思います。
どれだけの時間を休むか、どんな働き方を選ぶか。
その前に、「自分にとっての幸せとは何か」「なぜ、何のために働くのか」という考え方を持つことが大切です。
誰かの幸せを願いながら働く
その先に、自分自身の幸せがある。
それが、“本当の意味での“ワークライフバランス”なのではないかと考えています。
働き方の本質を考える
今回の高市総裁の発言をきっかけに、「働くとは何か」「自分は誰のために働いているのか」を、 あらためて見つめ直す機会になりました。
「ワークライフバランスを捨てて働く」という言葉は、
単に時間を犠牲にするという意味ではなく、
“どれだけ人や社会のために尽くせるか”という志の表れだと私は受け取りました。
その想いが、多くの人の中で対話のきっかけとなり、働き方の本質を考える原点になればと願っています。
私たちもまた、この時代の大きな流れに共鳴し、理念をもって「利他の実践」を重ねていくことで、よりよい社会をともに創っていきたいと思います。
皆さんは、どのように考えられましたか?

上本 修二(Shuji Uemoto)
株式会社ガイアシステム 代表取締役社長
NPO法人ユナイテッド・アース 理事・事務局長
https://www.gaiasystem.co.jp/
https://united-earth.jp
1967年、愛媛県松山市生まれ。株式会社ガイアシステムの創業メンバーとして参画し、現在は代表取締役社長を務める。自社開発の「HPCシステム」を通じ、企業経営における人的課題の解決や組織活性化を支援し、30年以上にわたり人材育成・組織開発に携わってきた。1995年に発生した阪神・淡路大震災では、自身も被災しながら支援活動に従事。この体験を通じて、市民一人ひとりの心の内に宿る良心の可能性を実感。以後、NPO法人ユナイテッド・アースの理事・事務局長として、災害復興支援や地域づくり、人材育成など、社会貢献活動を全国で展開。「企業の成長と社会の発展を両輪で進める」を信条に、次世代リーダーの育成や持続可能な社会づくりに力を注いでいる。







