採用活動の最前線に立つリクルーターに必要な「伝える力」「聴く力」「コミュニケーション力」を強化

導入先 自治体名 | 神戸市(行財政局 職員研修所) https://www.city.kobe.lg.jp/ |
研修内容 | KOBEナビゲーター研修 (実施内容:採用力強化研修) |
受講対象 | KOBEナビゲーター(※1)に任命された職員 |
受講者数(合計) | ・2023年 約180名(約60名×3回実施) ・2024年 約180名(約60名×3回実施) ・2025年 約100名(約40~60名×2回実施) |
実施方法 | ・対面研修(2時間) ・オンライン研修(2時間) |
キーワード | ・面談力・プレゼン力・コミュニケーション力強化 ・職員の部下育成スキル強化 ・組織内のエンゲージメント向上 |
(※1)KOBEナビゲーターとは:神戸市の仕事の魅力ややりがいを伝える、採用2〜8年目の担当職員および若手係長職員のこと。学生や転職希望者との面談、説明会やインターンシップ等に参加し、採用広報活動を行う役割。民間企業でいうリクルーターを参考に創設されたしくみです。
研修実施の背景
神戸市の職員「KOBEナビゲーター」を対象に、採用力強化研修を2023年から3年に渡り実施させていただきました。
組織の未来をつくる「KOBEナビゲーター」とは?
神戸市の「KOBEナビゲーター制度」は、神戸市職員を目指す学生や社会人に向け、現役職員が“ナビゲーター”として直接情報を届け、相談に応じる仕組みです。仕事の魅力や内容、実際の働き方など公式情報だけでは伝わりにくい疑問を解消し、受験者の不安を軽減するのが特色です。
若手職員を中心にリクルーター役を担うことで、応募者との距離を縮め、神戸市職員として働く魅力をリアルに発信。結果として採用母集団の形成やミスマッチの防止に貢献しています。また、オンライン面談など柔軟な対応も取り入れ、遠隔地からの応募促進にも取り組んでいます。

競争激化する採用市場への対応
競争が激化する採用市場で、母集団形成を強化し、採用目標を確実に達成するためには、KOBEナビゲーターの役割がますます重要になっています。
特に、新卒・転職希望者との”最前線の接点を担う”KOBEナビゲーターが、組織の魅力を的確に伝える「コミュニケーション力」を磨くこと、そして候補者に「ここで働きたい」と思ってもらえるかが鍵を握ります。
そういった意味では、採用は単なる選考ではなく、未来の仲間を惹きつける「営業活動」とも言えます。
研修の目的・カリキュラム構築のポイント
今回の研修では「KOBEナビゲーター」として、一人ひとりがその自覚を深め、仕事への誇りを持って候補者と向き合う力を磨くことを目的に実施しました。カリキュラム設計のポイントについてご紹介させていただきます。
KOBEナビゲーターが自身の仕事の魅力ややりがいを再認識し、効果的な採用広報を行うために必要なスキルや採用動向などの知識を習得することを重要視しました。
まずは、プレゼンテーションスキルを強化し、自分の言葉で職場の魅力を伝える練習を重ねます。
最新の採用市場データを視覚的にまとめたフリップを活用し、今の求職者心理や競合動向などを理解する時間も設けました。
さらに、面談スキルにおいては、候補者の不安や迷いを払拭する「対話力」を重視。ネガティブな情報を伝える際の配慮や、想定問答を用いたケーススタディなど、実践的なノウハウを体系立てて学びます。
また、研修の特徴的な取り組みとして、業務の棚卸しや「仕事の魅力をどう届けるか」を言語化するワークショップを実施。4〜5名程度のグループに分かれて、参加者同士で意見を交わし、より良い表現やアプローチを磨き合います。
座学だけでは得られない「相互フィードバック」や「気づき」を通じて、自分なりの面談スタイルを確立することを目指しています。
この経験を「自分自身のキャリアアップ」にどう活かすかも重要なテーマです。
研修では、実際に成長を遂げた先輩KOBEナビゲーターの事例も紹介しながら、採用業務を通じたスキル向上の可能性や自己成長の意義を伝え、参加者のモチベーションを高めることを大切にしています。


研修のポイント
採用活動においては、組織で働くことの意義や魅力を、より多くの求職者に的確かつ魅力的に届けること。
そして採用に関わる職員と求職者との接点を、ただの説明の場にとどめず、信頼を築く価値あるコミュニケーション機会に高めることが大切になってきます。
こうした接点を質的に向上させることこそが、職員採用試験の受験者増加やミスマッチの防止に寄与します。
特に面談の場は、候補者との信頼関係を構築し、興味を関心に、関心を志望へと変える最重要の接点です。応募者が抱える不安や疑問を解消し、自分の言葉で魅力を届ける力が問われます。
今回の研修では、こうした面談力を強化するために、「信頼構築」をテーマに据え、限られた時間で最大の効果を出すポイントを解説するとともに、実践的なロールプレイを実施し、研修参加者のコミュニケーションスキルの向上を目指しました。
「採用=見極め」ではなく「採用=営業活動」
また、KOBEナビゲーターとしてのマインドセットの転換も重要です。
「採用=見極める」だけでなく、「採用=営業活動」と捉え、受け身ではなく自ら働きかける「攻めるKOBEナビゲーター」を目指す。この意識を参加者全員で共有し、自分の言葉で語り、信頼を育む力を養うことで、採用活動をより強く、魅力的なものにできればと、研修プログラムを構成しました。
研修プログラム① データで見る採用市場の動向
Eラーニングを用いた動画講義
実施内容 | 詳細 |
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講義 | 1.日本の人口推移データから見る採用市場 ・22歳人口の予想推移(2050年まで) ・就職希望者数減少の推移 2.学生(転職者)優位の売り手市場 ・有効求人倍率データから見る売り手市場 ・学生1人あたりの平均内定取得数 ・就職人気企業ランキング 3.KOBEナビゲーターとしての心構え ・採用活動における面談の重要性 ・相手の話を聞く姿勢(傾聴と信頼関係) ・求職者との出会いの価値を高める方法 4.採用活動において大切な考え方 ・採用=営業/職場の魅力づけから始まる ・競合の採用担当に負けない魅力が重要 |


研修プログラム② KOBEナビゲーター研修
集合研修(対面+オンライン形式)
実施内容 | 詳細 |
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講義 | 採用活動の価値(キャリアの棚卸) ・ナビゲーターの役割について ・採用活動で得られる数多くのスキル 求職者が感じる「職場の魅力」とは ・魅力リストを作成する6つのポイント ・求職者が職場訪問で知りたいと感じている情報とは ・体験談を語ることで相手に魅力を届ける ・魅力を届けるために必要な「ヒアリング力」 |
グループワーク | グループワーク<職場の魅力を出す> ・「職場の魅力発見ワークシート」 |
講義 | ネガティブな質問を魅力づけに変える ・ネガティブを魅力に変える3つの鉄則 ・質問に対する打ち返しの具体的な事例 ・求職者のギャップを埋める表現方法 ・採用に関するQ&Aシート活用方法の説明 |
ロールプレイ | グループワーク<魅力ある自己紹介> ・魅力を高める自己紹介練習(声・表情) ・3人1組のチームに分かれて実施 |
講義 | まとめ(総括) ・キャリアデザインを見つめ直す ・トーク台本制作に向けて |
担当講師からのメッセージ

青木 佑介
株式会社ガイアシステム 専務取締役
研修事業部 エグゼクティブコンサルタント
2006年入社。2009年に教育事業部を立ち上げ、人材育成・組織マネジメントコンサルタントとして年間100社・2,000名に携わる。実体験に基づくリーダーシップ論や組織マネジメント論は多くの経営者に支持され、従来の研修では対応が難しい企業のニーズにも応えている。
採用活動とは、単なる人員の補充ではなく、組織の未来をつくる「戦略」です。
いま求められているのは、“条件で選ばれる組織”ではなく、“人で選ばれる組織”への転換です。
昨今の採用環境は、少子化や価値観の多様化により、いわゆる「待ちの採用」では成果が出にくくなっています。特に若年層の意思決定は、給与や福利厚生といった条件以上に、「その組織で働くイメージが持てるかどうか」「そこに信頼できる人がいるか」に大きく左右されます。
私自身これまで、官公庁・民間企業あわせて1000社以上の組織と関わらせていただきました。その中で、採用にお悩みの組織が非常に多いことを実感しながら、導き出したひとつの結論があります。
それは、「採用力は、経営力そのものである」ということです。
採用とは、外に向けて語る“組織の哲学”であり、それを担う人材の育成でもあります。
研修では、以下の3つを重視しています。
- 自社の魅力を言語化・構造化する力(ブランディング・ナラティブ)
- 候補者の心を動かす対話力(傾聴・共感・エンゲージメント)
- 採用担当者の自己理解と成長支援(リフレクションと実践)
現場の職員の方々の採用観そのものに変化ー

例えば、神戸市様の研修では、学生との接点で「何を語るべきか」「何が見られているのか」といった問いを通じて、現場の職員の方々の採用観そのものに変化が生まれました。
結果として、現場の会話の質が上がり、学生の反応にも明確な変化が見られています。
これらの対話スキルや思考技術は、単に採用業務にとどまらず、お客様との信頼関係構築、組織内のマネジメントやチームビルディングにも波及する普遍的なスキルです。いま経営層に問われているのは、「どう採るか」ではなく、「どんな人を惹きつけ、どう定着・活躍につなげるか」という視点です。
採用力は、企業の持続的競争優位を生む“人的資本”を形にする最前線。そこに経営資源を投じることこそが、未来への最も確かな投資だと私は考えています。これからも「人で勝てる採用戦略」を一緒に設計できることで、少しでもお力になれれば幸いです。