成果につながるアカウンティング研修(会計研修)|財務諸表を「読める」から「仕事に活かせる」へ変える研修設計

同じ財務諸表を学ぶ研修でも、成果につながる設計は会社ごとに違います。
このコラムでは、私が行っているアカウンティング研修(会計研修)の設計の考え方と、実際の進め方をご紹介します。

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アカウンティング研修(会計研修)とは

アカウンティングとは、会計のこと。
会社のお金の動きを記録し、決算書にまとめ、その数字を読み解くことを指します。
アカウンティング研修(会計研修)は、その決算書を、自分の仕事に活かせるようにする研修です。

会計研修の目的は、会計用語を覚えることではありません。

数字を手がかりに自社の事業を理解し、自分の仕事が利益やキャッシュ・フローにどうつながるかを考えられるようになることです。

共通の内容に見えて、設計は会社ごとに変わる

川口講師(企業研修・ガイアシステム)

私が企業から最も多くご依頼いただくアカウンティング研修(会計研修)では、財務3表の読み方、経営指標の見方、決算書を使った企業分析などを扱います。
※財務3表とは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つを指します。

一見すると、どの企業でも共通の内容を教えられるテーマに見えるかもしれません。しかし実際には、同じ財務諸表を学ぶ研修であっても、業種、受講者の職種、経営課題によって、成果につながる設計は大きく変わります。

私はこれまで、監査法人での会計監査、証券会社、ITベンチャー企業のCFO、会計コンサルティングという立場から、数字と経営の両方を見てきました。その経験を生かし、会計を専門用語の説明で終わらせず、受講者の仕事と会社の経営に結びつけることを重視しています。

財務諸表の知識だけでは、仕事は変わらない

アカウンティング研修の受講者には、経理部門以外の方が多く含まれます。営業、製造、研究開発、企画、事務など、日常業務で仕訳を行わない方々です。

こうした方に貸借対照表や損益計算書の定義を説明しても、研修中は理解できても、職場に戻ると「自分の仕事と何が関係するのか」が分からなくなりがちです。財務諸表を読めることと、仕事に活かせることの間には、想像以上に大きな隔たりがあります。

受講者が本当に知りたいのは、用語の意味ではない

受講者が本当に知りたいのは、売上高や営業利益の意味だけではありません。

・現場で進めている原価改善は、決算書のどこに表れるのか。
・設備投資は、会社の収益性や資金繰りにどのような影響を与えるのか。
・自社の経営計画で示されているROEやEBITDAは、なぜ重視されているのか。

そこまでつながって初めて、会計は自分の仕事に関係する知識になります。

ROEは、株主から預かった資本を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標
EBITDAは、本業でどれだけ現金を稼ぐ力があるかを、大まかに示す指標

教材を作る前に、その会社を分析する

私が研修の準備で最初に行うのは、スライドを作ることではありません。
まず、対象企業の決算書、有価証券報告書、決算説明資料、中期経営計画を読み込みます。
上場企業以外の場合は、ご提供いただける決算書や事業計画、公開されている情報をもとに、同じ視点で読み込みます。さらに、競合他社の利益率、財務構造、資本効率と比較し、その会社の強みと経営課題を整理します。

受講者の職種によって、必要な数字は変わる

同時に、受講者の職種、役職、会計知識の水準、研修後に求められる行動を確認します。受講者が製造部門であれば、原価、設備、稼働率と利益の関係が重要になります。
営業部門であれば、得意先の財務状況や与信、売上と利益の違いが実務に直結します。企画部門であれば、投資判断や経営指標の読み方が欠かせません。

私が考えるオーダーメイド研修

私にとってオーダーメイド研修とは、教材を作り替えることではありません。
その会社で実際に行われている意思決定を、受講者が研修の中で追体験できるように設計することです。

大手製造業で行ったアカウンティング研修の事例

川口講師(企業研修・ガイアシステム)

ある素材系製造業(従業員約1万5,000名規模、東証プライム上場)で、アカウンティング研修を実施しました。参加者は約60名。営業、製造、研究開発、事務など幅広い職種から、新入社員、若手社員、係長・監督職、管理職までが参加しました。
職種も階層も異なる受講者が同じ場で学ぶことで、同じ数字を自分の立場からどう見るかを持ち寄り、部門を越えて共有できる状態をつくることを狙いました。

数字は見ているが、意味までは分からない

参加者の多くは、財務諸表を日常的に扱うわけではありません。一方で、営業会議や工場の収益報告、中期経営計画、設備投資の検討などを通じて、会社の数字に触れる機会はあります。
「数字は目にしているが、その意味やつながりまでは分からない」という状態です。

まず、財務諸表を図に置き換える

そこで研修は、財務諸表を図に置き換えるところから始めました。

  • 貸借対照表は、お金の調達源泉と運用形態を表す図にする。
    (どこからお金を集め、それが何に変わっているか)
  • 損益計算書は、売上高から各段階の利益がどのように残るかを形で捉える。
    売上高から原価や費用が差し引かれ、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益へと段階的に残っていく流れを、幅や面積で見えるようにします。
  • キャッシュ・フロー計算書は、本業、投資、資金調達による現金の動きを可視化する。

この方法により、数字の羅列が会社の活動を映す構造として見えてきます。

「図にする・比較する・自社を分析する」の順に学ぶ

研修では、基礎知識を説明した直後に、自分の手で図を描き、実在企業の決算書を比較する演習を行います。安全性の高い会社はどちらか。利益率の違いはビジネスモデルの何から生じるのか。キャッシュ・フローの組み合わせから、会社が成長局面にあるのか、財務体質の改善を進めているのかを考えます。営業活動、投資活動、財務活動のキャッシュ・フローが、それぞれプラスかマイナスか。その組み合わせを見ると、会社が今どの局面にいるのかが読み取れます。

最後は、自社の決算書を自分の手で分析する

そして最後に、受講者自身が自社の直近年度の財務諸表を分析します。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を図にし、自己資本比率、利益率、ROA、ROE、総資産回転率などを確認します。
いずれも、安全性(つぶれにくさ)、収益性(もうける力)、効率性(資産をどれだけうまく使えているか)を見るための代表的な指標です。
さらに、中期経営計画で示された指標や同業他社との違いも踏まえ、自社の強み、課題、その背景をグループで議論します。

ここで求めるのは、経営指標を正しく計算することだけではありません。「なぜ、この数字になっているのか」「自分たちの現場の活動は、どの数字に影響するのか」「会社をより良くするために、自部署で何ができるのか」まで考えてもらいます。

アカウンティング研修(会計研修)設計の3原則

原則

自社から逆算する

・決算書、中期経営計画、競合比較、受講者の業務を調べ、研修後に必要な判断から内容を設計する。
・一般的な会計知識を順番に積み上げるのではなく、受講者が研修後に行う判断から逆算して、扱う範囲と深さを決めます。

原則

数字を図と比較に変える

・財務3表を図に置き換え、実在企業の比較を通じて、数字の意味を直感的に理解できる状態をつくる。

原則

理解を行動につなげる

・自社分析、グループ討議、発表を通じて、「自部署で何を変えるか」まで考える。

アカウンティング研修後に起きた変化

川口講師(企業研修・ガイアシステム)

研修後のアンケートでは、「何となく見ていた数字が、意味のある数字として理解できるようになった」「自社の財務状況を自分の手で分析したことで、中期経営計画への理解が深まった」「原価改善や効率改善が、利益率や資産効率にどう表れるか分かった」といった趣旨の声が寄せられました。

また、財務諸表に苦手意識を持っていた受講者からも、「決算書を図にすることで直感的に理解できた」「自分でも他社の決算書を見てみたいと思った」「会社の利益のために、自分が何を意識すべきか考えるきっかけになった」という反応がありました。

回答者教材が理解に役立った成長を実感できた
60名4.8/5.04.8/5.0

※研修終了後に実施した受講者アンケートの結果です。5段階評価の平均値を示しています。

数値より大きかったのは、受講者の関心の変化

評価が高かったこと以上に重要なのは、受講者の関心が「会計を理解できた」から「自社をもっと理解したい」「自分の業務を会社の成果につなげたい」へ変化したことです。
このような従業員の意識変革こそ、私がアカウンティング研修で目指している到達点です。

初学者に分かりやすく、考える余地も残す

基礎研修では、会計知識がほぼない方にも理解できる進め方が必要です。
しかし、説明を簡単にするだけでは、実務で使える力にはなりません。分かりやすさと引き換えに、受講者が自分で考える時間まで削ってしまうと、研修の中だけで完結した知識になってしまうからです。

一人で考え、他の見方を聞き、自社に応用する

私は、図解、身近な企業の事例、個人演習、グループ討議を段階的に組み合わせます。
まず一人で考え、次に他の受講者の見方を聞き、最後に自社の数字へ応用する。
この順番を踏むことで、理解度に差がある受講者同士でも助け合いながら学ぶことができます。

高い評価を得た研修でも、そのまま繰り返さない

研修後の意見も、次回の設計に反映します。
演習の難易度に段差がなかったか、説明と演習の時間配分は適切だったか、初学者が迷う箇所はどこか。
高い評価を得た研修でも、そのまま繰り返すことはありません。受講者の反応をもとに、教材と進行を更新し続けます。

私が提供しているのは、数字を共通言語に変える研修

川口講師(企業研修・ガイアシステム)

会計は経理部門だけの専門知識ではありません。営業、製造、研究開発、企画、管理部門が、部門を越えて会社の課題を話し合うための共通言語です。

現場で行っている改善活動が、会社の利益やキャッシュ・フローにどうつながるのか。経営陣が掲げる目標を、自分の仕事にどう落とし込むのか。財務諸表を読み解けるようになると、社員は自部署だけでなく、会社全体を俯瞰して考えられるようになります。

私が提供しているのは、数字を共通言語に変える研修

私はこれまで1,000回を超える研修に登壇し、80社を超える企業の人材育成に携わってきました。継続してご依頼いただける理由は、会計知識を分かりやすく説明することだけではないと考えています。研修前に会社を深く理解し、その会社の課題に即した演習を設計し、受講者の変化を次回の改善につなげる。そこまでを一つの納品として考えているからです。

目指すのは、自分の仕事を会社の成果につなげられる人材

アカウンティング研修の目的は、決算書を読める人を増やすことではありません。数字を使って自社を理解し、自分の仕事を会社の成果につなげられる人材を育てることです。私は、そのための学習の構造を、一社ごとに設計しています。

川口宏之講師の研修プログラム(一例)

仮画像です
テーマ研修内容
決算書を読む・使う・財務会計基礎研修(財務3表の読み方と活用法)
・財務会計応用研修(経営分析研修)
・簿記会計基礎講座
・与信管理基礎講座
現場の数字で判断する・損益分岐点分析講座
・業績管理会計講座
・原価計算基礎講座
・意思決定のための会計講座
経営の視点を持つ・ファイナンス講座
・キャッシュフロー経営の基本と実務
・ROIC経営の基本と実践
・内部統制研修

「会計研修を実施したいが、何から決めればよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。受講者層、研修時間、到達目標をうかがったうえで、貴社に合う内容をご提案させていただきます。


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著者プロフィール

川口 宏之講師

川口講師(企業研修・ガイアシステム)

・監査法人トーマツで上場企業の会計監査、証券会社で新規上場の引受審査を担当。その後ITベンチャー企業の取締役兼CFOとして、資金調達や上場準備など、経営の最前線で数字をもとに意思決定を行う立場を経験。
・会計コンサルティングファームでIFRS導入支援や研修講師を務め(2011年度から2018年度は早稲田大学会計大学院の非常勤講師)、2019年に研修講師として独立。登壇回数1,000回超、導入社数80社超、リピート率88.5%。
・「会計を、現場で使える言葉に変える」をテーマに、図解、実在企業の事例、演習を組み合わせた研修を設計。財務会計から管理会計、ファイナンス、内部統制、ROIC経営まで、新入社員から経営幹部層まで対応している。

【資格】公認会計士(登録番号24592/日本公認会計士協会 東京会)
【著書】『決算書を読む技術』(かんき出版)、『サクッとわかるビジネス教養 決算書』(新星出版社)ほか
【メディア出演】PIVOT、日経CNBC、週刊ダイヤモンド、プレジデント、週刊東洋経済など ほか出演・寄稿多数

成果につながるアカウンティング研修(会計研修)

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