「これを言ったら、ハラスメントと思われるんじゃないか」
管理職やリーダーの方とお話ししていると、そんな声を耳にすることがあります。
部下や職員に改善してほしいことがある。伝えなければならないことも分かっている。でも、伝え方を間違えればハラスメントと受け取られるかもしれない。そう考えると、つい言葉を選びすぎたり、必要な指導をためらったりしてしまう。
今の職場では、決して珍しい悩みではありません。
先日、堺市教育センター様にて、学校管理職約120名を対象としたハラスメント防止研修を担当しました。事前アンケートでは、約65%の方が「指導とハラスメントの区別に迷う場面がある」と回答されていました。
今回の研修で私が特にお伝えしたかったのは、「何も言わない」ことがハラスメント対策ではない、ということです。大切なのは、遠慮ではなく配慮をもって伝えることです。

株式会社ガイアシステム
田近 博士(たぢか ひろし)
年間100件を超える研修で、全国10,000人以上の受講者を支える人気講師―
現場で即実践できる内容と、組織成果につながる講義スタイルが評価され、多くの企業で導入。研修・コンサルティングを通じて、人材育成と組織の成長を継続的に支援している。
「遠慮」と「配慮」は違う
私が研修でよくお伝えしている言葉があります。それは、「遠慮」と「配慮」は違うということです。
遠慮とは、相手に気を遣うあまり、必要なことまで言わずに済ませてしまうこと。
一方、配慮とは、相手の立場や状況、気持ちを考えたうえで、必要なことを適切に伝えることです。
相手を大切に思うことと、相手に何も言わないことは違います。本当に相手の成長を願うのであれば、伝えるべきことは伝えなければなりません。
ただし、自分の考えを一方的に押し付けるのではなく、相手がどう受け止めるかにも目を向ける。ここが大切なんです。
「でも」「しかし」ではなく「その上で」
では、具体的にどう伝えればいいのでしょうか。私が研修で紹介している方法の一つが、言葉の選び方を少し変えることです。
例えば、部下が自分なりに考えて取り組んだ仕事について、改善点を伝えたい場面。
「頑張ってくれたのは分かる。でも、ここは違うよ」
こう言われると、相手は最初に認めてもらったことよりも、その後の否定的な言葉に意識が向いてしまうかもしれません。
そこで、「でも」「しかし」ではなく、「その上で」という言葉を使ってみる。
「頑張ってくれたことは分かっているよ。その上で、ここをもう少し改善できると、もっと良くなると思うんだ」
伝えている内容は大きく変わりません。しかし、相手の努力や考えを一度受け止めてから伝えることで、言葉の届き方は変わってきます。
もちろん、言葉だけを変えればよいという話ではありません。大切なのは、相手を否定するために伝えるのではなく、相手の成長や仕事の改善につなげるために伝えるという姿勢です。
信頼関係は、日々の小さな行動から生まれる
もう一つ、私が大切にしているのが「凡事徹底」です。
挨拶をする。相手の目を見て話す。感謝を伝える。間違えたときには素直に謝る。
どれも特別なことではありません。しかし、こうした当たり前のことを、日々きちんと積み重ねられているでしょうか。
挨拶をしても返事がない。話しかけても忙しそうにされる。いつも表情が硬く、何となく声をかけづらい。
一つひとつは小さなことでも、積み重なれば、職場の人間関係に影響していきます。そして、いざ指導や注意が必要になったとき、普段から関係性ができているかどうかで、同じ言葉でも受け止められ方は変わります。
よく「何を言われるかより、誰から言われるかが大切」と言いますよね。まさにその通りだと思います。
仲良くなることが目的ではありません。相手に嫌われないように振る舞うことでもありません。必要なことを率直に伝え、相手にも受け止めてもらえる関係を、日頃からつくっておくことです。
知識を学ぶだけでなく、明日からの行動を変える
今回の堺市教育センター様での研修では、ハラスメントに関する知識の確認だけでなく、管理職としての日々の関わり方や、具体的な声のかけ方についても一緒に考えました。
事前アンケートで寄せられた悩みをもとに、学校現場に合わせた事例やワークを取り入れ、受講者の皆さんにも対話を重ねていただきました。
研修後の振り返りアンケートでは、回答者全員が「学んだことを実践に生かそうと思う」と答えてくださいました。
「まずは、次の出勤で目を見て、元気に挨拶します」
そんな具体的な声も寄せられています。
私は、こうした言葉がとても大切だと思っています。
研修を受けて、知識が増えた。それだけで終わってしまっては、もったいない。
明日から挨拶を変えてみる。部下への声のかけ方を変えてみる。相手の話を最後まで聴いてみる。
小さなことで構いません。
学んだことを一つでも実践し、その積み重ねが職場の変化につながっていく。それこそが、研修の本当の意味だと考えています。
まとめ|大切なのは「遠慮」ではなく「配慮」
ハラスメントを防ぐために必要なのは、何も言わないことではありません。
相手を思いやり、必要なことをきちんと伝えられる関係をつくること。
「遠慮」ではなく「配慮」。
この違いを、ぜひ日々のマネジメントの中で意識していただきたいと思います。
堺市教育センター様の研修導入事例
今回の研修では、事前アンケートで把握した管理職の皆さまの悩みをもとに、学校現場に合わせた内容を設計しました。
研修導入の背景や企画段階での取り組み、当日の様子、受講後のアンケート結果などを詳しくご紹介しています。ぜひ、こちらもご覧ください。
▶ 学校管理職向けハラスメント防止研修|堺市教育委員会 堺市教育センター様
講師プロフィール
田近 博士(たぢか ひろし)
年間100件を超える研修で、全国に10,000人以上の受講者を支え活躍する人気講師―
温かみのある関西弁と、わかりやすく心に響くストレートな伝え方が特徴で、受講者の行動変容を力強くサポートしている。

「その人の人生にとことん寄り添う」という想いを軸に、研修での学びを通じて受講者が新たな一歩を踏み出せるよう導く姿勢が、多くの企業から高く評価されている。
単なる知識提供にとどまらず、現場ですぐに実践できる研修内容と共に、モチベーションを引き出す講義は「今の時代に必要な学びの場」として人気を集めている。
愛情深いコミュニケーションスタイルと丁寧な指導を通じて、受講者が前向きに自信を持って踏み出せるよう研修を展開。研修・コンサルティングでの出会いを通じて、人生やキャリアを前進させたい方を企業・人を全力で支えている。

