帰属意識を高める研修とは?成功のポイントを解説

近年、働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、「帰属意識」とともに、自分が組織の一員として安心して働ける“居場所感(belonging)”の重要性があらためて注目されています。

従業員が「ここにいて良い」「自分は必要とされている」と感じられる居場所感と帰属意識は、離職率の低下やエンゲージメント、生産性の向上に直結する重要な要素です。

しかし、「具体的に何をすれば帰属意識や居場所感が高まるのか分からない」「どのような研修が効果的なのか知りたい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

 

帰属意識の基礎知識から、低下の原因、高めることのメリット、そして効果的な研修プログラムや成功のポイントまでを、分かりやすく解説します。

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帰属意識とは何か?

帰属意識とは、特定の組織や集団に所属しているという感覚や、その一員であるという意識のことを指します。

ビジネスの文脈では、従業員が「この会社の一員である」と感じ、組織に対して一体感や愛着を持つ状態を意味します。

この意識は、単に会社に在籍しているという事実だけでなく、企業の理念や文化への共感、同僚との良好な関係性など、さまざまな要因によって育まれます。

 

帰属意識が高い組織では、従業員が自社の目標を自分ごととして捉え、積極的に貢献しようとする姿勢が見られます。

帰属意識の基本的な定義

帰属意識は、心理学の用語としても用いられ、人が特定の集団の一員であると自覚することを指します。

ビジネスシーンにおいては、従業員が企業やチーム、部署といった集団に対して抱く一体感を指す言葉として使われます。

この意識は、組織の業績にも貢献する忠誠心とも言えるでしょう。従業員が「自分はこの組織に受け入れられている」「ここに自分の居場所がある」と感じることで、安心感や満足感を得られ、仕事へのモチベーション向上にも繋がります

エンゲージメントやロイヤリティとの違い

帰属意識と似た言葉に「エンゲージメント」や「ロイヤリティ」があります。

 

これらの違いを理解すことは、適切な組織開発施策を考える上で非常に重要です。

用語方向性関係性主な特徴
帰属意識従業員→企業一方向組織の一員であるという「所属」の意識
エンゲージメント従業員⇔企業双方向企業と従業員の結びつきの強さ。貢献意欲を伴う。
ロイヤリティ従業員→企業主従関係企業への忠誠心。企業の意向を忠実に体現する姿勢。

ロイヤリティが企業と従業員の主従関係を前提とした「忠誠心」を指すのに対し、帰属意識は対等な関係性の中での「一体感」を意味します。

一方、エンゲージメントは、帰属意識に加えて「企業に貢献したい」という意欲が伴う、企業と従業員の双方向の強い結びつきを指す点が大きな違いです。

なぜ今、帰属意識が注目されるのか

現代において帰属意識が注目される背景には、終身雇用制度の実質的な崩壊と、それに伴う人材の流動化があります。

かつては一つの企業に長く勤めることが一般的でしたが、現在では転職を通じてキャリアアップを図ることが当たり前になりました。

このような状況下で、企業が優秀な人材を確保し続けるためには、従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような魅力的な環境を提供することが不可欠です。その鍵となるのが、従業員の帰属意識の向上なのです。

帰属意識が低下する主な原因

従業員の帰属意識は、些細なきっかけで低下してしまうことがあります。

 

その原因を正しく理解し、対策を講じることが必要です。
ここでは、帰属意識が低下する主な原因について解説します。

帰属意識が低下する主な原因

働き方の多様化とコミュニケーション不足

テレワークやフレックスタイム制度など、働き方が多様化したことで、従業員同士が顔を合わせる機会が減少しました。

これにより、雑談などの偶発的なコミュニケーションが減り、チームとしての一体感が希薄になりがちです。

特に、上司や経営層との直接的な対話が不足すると、企業のビジョンや経営方針が伝わりにくくなり、帰属意識の低下に繋がります。

帰属意識が低下する主な原因

企業理念やビジョンの未浸透

企業の理念やビジョンが従業員に十分に共有されていない場合、従業員は「自分たちが何のために働いているのか」という目的意識を見失いがちです。

会社が目指す方向性が分からなければ、日々の業務に意義を見出すことは難しく、結果として会社への所属意識も薄れてしまいます

経営層が考えていることと、現場の従業員の認識にズレが生じると、組織としての一体感は生まれません。

帰属意識が低下する主な原因

公平性を欠いた評価や待遇への不満

従業員が「自分の働きが正当に評価されていない」と感じることは、帰属意識を著しく低下させる大きな要因です。

評価基準が曖昧であったり、上司の主観に左右されたりすると、従業員は会社に対して不信感を抱きます

また、業務内容や成果に見合わない待遇も同様です。

このような不満は、仕事へのモチベーションを削ぐだけでなく、「この会社は自分を大切にしてくれない」という感情に繋がり、離職を考えるきっかけにもなります。

帰属意識が低下する主な原因

成果主義の浸透による個人主義の加速

年功序列制度に代わり、成果主義を導入する企業が増えています。

成果主義は個人のパフォーマンスを最大化する一方で、過度に行き過ぎると、チームワークよりも個人の成果を優先する風潮を生み出すことがあります。

その結果、同僚は「仲間」ではなく「ライバル」となり、社内での協力体制が崩れ、組織としての一体感が失われることで帰属意識が低下する可能性があります。

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帰属意識を高めることで企業が得られるメリット

従業員の帰属意識を高めることは、企業にとって多くのメリットをもたらします。

 

組織の持続的な成長を目指す上で、帰属意識の向上は欠かせない要素と言えるでしょう。

離職率の低下と人材の定着

帰属意識が高い従業員は、自社で働くことに誇りや価値を感じているため、離職を考える可能性が低くなります。

労働人口が減少する現代において、優秀な人材を確保し、定着させることは企業の最重要課題の一つです。

離職率が低下すれば、新たな人材を採用するためのコストや、新入社員を育成するためのコストを削減できるというメリットもあります。

従業員のモチベーションと生産性の向上

「自分は会社に貢献できている」という実感は、従業員の仕事に対するモチベーションを大きく向上させます。

帰属意識が高い従業員は、自社の目標達成を自分自身の目標として捉え、主体的に業務に取り組むようになります。

一人ひとりのパフォーマンスが向上することで、チームや部署、ひいては企業全体の生産性アップに繋がるのです。

組織としての一体感と協力体制の強化

帰属意識の向上は、従業員同士の連帯感を強め、組織としての一体感を醸成します。

部署や役職の垣根を越えた円滑なコミュニケーションが生まれ、情報共有や連携がスムーズに進むようになります。

社内で発生した課題に対しても、「自分ごと」として捉え、チームで協力して解決しようとする風土が育まれるでしょう。

採用コストや育成コストの削減

従業員の定着率が向上することで、欠員補充のための採用活動を行う頻度が減り、採用に関連するコストを大幅に削減できます。

また、育成した人材が長く会社に留まることで、スキルやノウハウが社内に蓄積され、長期的な視点での人材育成計画を立てやすくなります。

これは、企業の競争力を維持・強化する上で非常に大きなアドバンテージとなります。

帰属意識を高める効果的な研修プログラム

帰属意識を高めるためには、具体的な施策として研修プログラムを導入することが非常に効果的です。

 

ここでは、代表的な研修プログラムを4つ紹介します。

研修プログラム目的主な内容
チームビルディング研修チーム内の結束力を高め、協力体制を構築する。共同での課題解決ゲーム、グループディスカッション、スポーツなど。
理念浸透ワークショップ企業の理念やビジョンへの理解と共感を深める。経営層からのメッセージ共有、自社の歴史や価値観を学ぶワーク、今後の行動計画策定など。
キャリアデザイン研修会社での中長期的なキャリアパスを描き、成長意欲を高める。自己分析、将来の目標設定、上司との1on1面談、スキルアップ計画の作成など。
コミュニケーション活性化研修部署や役職を超えた円滑な人間関係を構築する。アサーティブコミュニケーション、雑談力向上、フィードバックスキルなど。

チームビルディング研修

チームビルディング研修は、ゲームや共同作業を通じて、チームメンバー間の相互理解を深め、結束力を高めることを目的とします。

言葉を使わずに意思疎通を図るジェスチャーゲームや、限られた情報の中で目標達成を目指すビジネスゲームなど、楽しみながら一体感を醸成できるプログラムが人気です。

普段の業務では見られないメンバーの新たな一面を発見し、信頼関係を構築する良い機会となります。

理念浸透ワークショップ

企業の理念やビジョンを従業員一人ひとりに浸透させ、共感を促すための研修です。

経営層が自らの言葉で会社の目指す方向性や価値観を語るセッションや、自社の歴史や成功体験を共有するワークショップなどが含まれます。

従業員が会社の理念を自分ごととして捉え、日々の業務と結びつけて考えることで、「この会社の一員として目標達成に貢献したい」という意識を高めることができます。

キャリアデザイン研修

従業員が自身のキャリアについて考え、会社内での将来像を描くことを支援する研修です。

これまでのキャリアの棚卸しや、自身の強み・弱みの分析を通じて、今後どのようなスキルを身につけ、会社にどう貢献していきたいかを明確にします。

会社が従業員のキャリア形成をサポートする姿勢を示すことで、従業員は安心して長く働き続けられると感じ、帰属意識の向上に繋がります。

コミュニケーション活性化研修

職場の人間関係は、帰属意識に大きな影響を与えます。

この研修では、上司・部下・同僚との円滑なコミュニケーションスキルを学びます。

相手を尊重しながら自分の意見を伝えるアサーティブコミュニケーションや、心理的安全性を高めるための傾聴スキル、ポジティブなフィードバックの方法などを実践的にトレーニングします。

 

風通しの良い職場環境を作ることで、従業員の定着を促します。

帰属意識を高める研修を成功させるためのポイント

研修を実施するだけで、自動的に帰属意識が高まるわけではありません。

 

研修の効果を最大化するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

POINT

研修の目的を明確に設定する

なぜ帰属意識を高める必要があるのか、研修を通じてどのような状態を目指すのか、その目的を具体的に設定することがスタートラインです。

例えば、「若手社員の離職率を◯%低下させる」「部署間の連携を強化し、新商品開発のスピードを上げる」など、定量的・定性的な目標を立てましょう

目的が明確であれば、研修内容の選定や効果測定が容易になります。

POINT

経営層も積極的に関与する

帰属意識の向上は、全社的に取り組むべき課題です。

特に、経営層がこの取り組みの重要性を理解し、積極的に関与する姿勢を示すことが不可欠です。

研修の冒頭で経営トップからメッセージを発信したり、ワークショップに参加したりすることで、従業員に本気度が伝わり、研修への参加意欲も高まります

POINT

研修後も継続的なフォローアップを行う

研修はあくまできっかけ作りであり、その効果を持続させるためには、研修後のフォローアップが欠かせません。

研修で学んだことを実践するための具体的なアクションプランを立てさせ、定期的な進捗確認の場を設けましょう。

上司による1on1ミーティングでの声かけや、メンター制度の導入なども有効です。

研修を「やりっぱなし」にせず、継続的にサポートする体制を整えることが成功の鍵となります。

POINT

多様な価値観を尊重する風土を醸成する

現代の組織は、年齢、性別、国籍、ライフスタイルなど、多様な背景を持つ人材で構成されています。

画一的な価値観を押し付けるのではなく、それぞれの従業員の個性や考え方を尊重する企業文化を育むことが求められます。

従業員一人ひとりが「自分らしくいられる場所だ」と感じられる職場環境を作ることが、結果的に組織全体への帰属意識を高めることに繋がります。

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【事例紹介】帰属意識向上に成功した企業の取り組み

ここでは、実際に研修や施策を通じて従業員の帰属意識向上に成功した企業の事例を3つご紹介します。

 

自社の取り組みの参考にしてください。

コマニー株式会社の内製化研修による仲間意識向上

オフィス・工場向けパーティションのトップメーカーであるコマニー株式会社は、2011年にガイアシステムのHPCシステムを導入し、従業員約1,500名の帰属意識向上に成功しました。

同社は本社内に「HPC推進室」を設置し、各部署から20名をHPCトレーナーとして選出して半年間のトレーナートレーニングを実施しています。

理念研修にビジネスシェアリングやアクティブラーニングを組み込み、社員が運営側に回ることで主体性を醸成する自主運営モデルを採用した結果、「本当の仲間が出来た」という実感を社員が得られるまでになりました。

株式会社フレアスの横断的つながり強化施策

2000年に山梨県で創業した株式会社フレアスは、事業拡大に伴い心豊かな人材育成環境を目指し、2013年にHPCシステムを導入しました。

同社では事前準備不要の対話型研修を重ね、「聞く・聴く・訊く」の姿勢を徹底することで相手の思いを引き出すコミュニケーション手法を確立しています。

北陸から近畿エリアを横断したメンバー同士の交流機会を設けることで、組織の枠を超えた横のつながりが生まれ、「無いものは自分たちで作る」という主体的行動を促進する文化が醸成されました。

豫洲短板産業株式会社の一体感創出プログラム

昭和8年創業の豫洲短板産業株式会社は、2011年に企業成長に伴う社員数増加の中で事業部間連携強化と人材育成体系化を目的にHPCシステムを導入しました。

マインドシェアリングとアクティブラーニングを軸とした内製化プログラムにより、社員同士が本音を語り合う場を社内で運営する体制を構築しています。

その結果、社内に一体感が生まれ、互いの理解が深まったことで前向きなアイデアが創出される組織風土へと変化し、社員の人間力向上にもつながっています。

帰属意識を高める研修に関する「よくある質問(Q&A)」

帰属意識とはなんですか?

帰属意識とは、自分が会社やチームの一員であるという認識を持ち、仕事を通じて一体感を感じながら成果に貢献意欲を持つ状態を指します。

単なる「所属」ではなく、役割や目的を理解し、自分の行動が組織の成果に結びついていると実感できている状態がポイントです。OJTや組織開発の取り組みと組み合わせることで、より高めることができます。

なぜ今、帰属意識が注目されていますか?

帰属意識が注目されているのは、終身雇用の崩壊で人材が流動化し、企業側に定着・離職防止が強く求められているためです。

社員が仕事を自分事として捉え、組織への貢献を実感できる状態をつくることで、エンゲージメントが向上し、生産性や戦力化スピードにも直結します。企業にとって重要な経営課題として扱われています。

帰属意識が低下する主な原因はなんですか?

帰属意識が低下する主な原因は、働き方の多様化やリモートワークでのコミュニケーション不足により、会社やチームとのつながりを感じにくくなる点です。

さらに、企業ビジョンが浸透していないことや、不公平に感じる評価・労働環境も、組織への一体感を阻害します。

これらが積み重なると、社員は「自分が組織の一員である」という実感を持ちづらくなります。

帰属意識を高めることで企業が得られるメリットはなんですか?

帰属意識を高めることで、社員のモチベーション向上や離職率の低下が期待できます。

また、チーム内の一体感が強まり、チームワークが円滑化するため、生産性や組織力の向上にも直結します。

さらに、社員が自分事として業務に向き合うことでスキルアップが促進され、企業理念の浸透も進みやすくなります。

帰属意識を高めるための研修にはどんな内容がおすすめですか?

帰属意識を高める研修では、チームビルディング研修で協力関係を築き、共同作業を通じて「自分は組織の一員だ」という感覚を強めます。

さらに、ビジョン・理念浸透研修で方向性への共感を育み、現場の悩みを扱うフォローアップ研修やメンタルヘルスサポートで心理的安全性を確保します。

将来像を描くキャリアデザイン研修では働く目的と組織貢献の接続を強め、結果としてモチベーション向上につながります。

帰属意識を高めるための研修を行う際のポイントはなんですか?

研修は双方向性を重視し、グループワークで「意見を言いやすい」環境をつくることが重要です。

まず参加者の現状把握を行い、実態に合った内容へオーダーメイド設計することで効果が最大化します。

実施後はアンケートや行動変化の効果測定を行い、定着を促すアフターフォローをセットで設計することがポイントです。

こうした一連のプロセスを、ガイアシステムでは一括でサポートが可能です。

まとめ

本記事では、帰属意識の重要性から、低下の原因、高めるメリット、そして具体的な研修プログラムや成功のポイントについて解説しました。

従業員の帰属意識を高めることは、人材の定着、生産性の向上、そして組織の一体感醸成に繋がり、企業の持続的な成長に不可欠です。

 

ぜひ、自社の課題に合った施策や研修の導入を検討してみてください。

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