「どうしたらいいですか」。部下からそう聞かれて、答えに困ったことはないでしょうか。
上司が判断するためには、判断に必要な材料がそろっていることが大切です。ところが、部下からの報連相には、状況の説明だけで、何を判断してほしいのかが伝わっていないケースも少なくありません。
報連相をするときは、ただ状況を伝えるのではなく、結論・選択肢・理由を整理して持っていくことが大切です。
例えば、「どうしたらいいですか」ではなく、「AとBがあります。どちらにしますか」と相談する。これだけでも、上司は判断しやすくなります。
今回は、私が次世代リーダー研修などでお伝えしている「判断材料を持っていく報連相」について、部下への教え方も含めて解説します。
- 報連相がかみ合わない原因の一つは、上司が判断するための材料が届いていないこと
- 「どうしたらいいですか」ではなく、結論・選択肢・理由を整理して相談する
- 部下には報連相の型を教え、材料が足りないときは問いかけを通じて本人に考えてもらう

岡本 好市
株式会社ガイアシステム 研修事業部長
現場に寄り添った対話型の研修を強みとし、受講者の行動変容につながるプログラム設計を行っている。また、NPO法人の職員も兼務し、災害支援の分野にも継続的に携わっている。
上司が「動かない」のは、判断材料が届いていないから
相談しても、上司が動いてくれない。多くの会社で、よく聞く悩みです。
上司は、さまざまな情報をもとに判断しなければならない立場にいます。ところが、部下からの報告や相談に、判断するための材料がそろっていないことが意外と多いのです。
状況だけを伝えられても、上司は何を基準に判断すればよいのか分かりません。その結果、「もう少し考えてみて」「臨機応変に対応して」といった曖昧な返答になってしまうこともあります。
もちろん、上司側の伝え方や対応に問題がある場合もあります。ただ、部下の立場からも、上司が判断しやすい情報を持っていけているか、一度振り返ってみてほしいと思います。
「どうしたらいいですか」と「AとBのどちらにしますか」
報連相では、同じ内容を伝える場合でも、聞き方によって相手の受け取り方が変わります。
例えば、次の二つの相談を比べてみてください。
| 判断材料がない聞き方 | 判断材料を持っていく聞き方 |
|---|---|
| 「こういうことがあったんですけど、どうしたらいいですか」 | 「AとBがあります。〇〇さん、どちらにしますか」 |
| 上司が状況を整理し、対応方法まで考える必要がある | 上司は選択肢を比較して判断できる |
「うまいことやっておいて」と返されると、部下は「いや、あなたが決めてください」と感じるかもしれません。お互いにストレスがたまってしまうパターンです。
大切なのは、上司に丸ごと判断を預けるのではなく、自分なりに考えた選択肢を持っていくことです。
「AかBかで迷っています。〇〇さんは、どちらがよいと思いますか」
こうした相談ができているかどうかで、報連相の質は変わってきます。
例:納期の相談を「判断材料つき」にする
例えば、頼まれた資料が期限に間に合いそうにないとします。二つの相談の仕方を比べてみましょう。
| 判断材料がない相談 | 判断材料つきの相談 |
|---|---|
| 「資料が期限に間に合いそうにありません。どうしたらいいですか」 | 「資料の提出について、ご判断をお願いします。A:今日中に主要部分だけ提出し、残りは明日。B:明日の午前にすべてそろえて提出。先方の会議が明日の午後なので、私はBでも間に合うと考えています。どちらにしますか」 |
右側の相談では、提出方法の選択肢と、それぞれを選ぶ理由が示されています。上司は状況を一から整理する必要がなく、提示された材料をもとに判断できます。
このように、結論・選択肢・理由を整理して相談することが、判断材料を持っていく報連相の基本です。
リーダーになったら、部下に「判断材料を持ってくる報連相」を教えよう
主任や係長、課長などの立場になると、今度は自分が部下から相談を受ける側になります。
そこで初めて、部下からの「どうしたらいいですか」という相談が、どれだけ大変なものかを実感する人もいるでしょう。
状況を聞き、問題を整理し、選択肢を考え、判断する。これらをすべて上司が担っていては、時間がいくらあっても足りません。
だからこそ、部下を指導する立場になったら、「判断材料を持ってくる報連相」を教えてほしいと思っています。
報連相の型を身につけることで、仕事のやり取りが円滑になり、判断にかかる時間も短縮できます。
ただし、報連相は、やり方を知っているだけでは十分ではありません。実際に使えるようになるまで、繰り返し練習することが大切です。
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判断材料を持ってくる報連相の型|結論・選択肢・理由とPREP法

では、部下には具体的に何を持ってきてもらえばよいのでしょうか。
私が研修でお伝えしているのは、次の3つの要素です。
- 結論:何について、何を決めてほしいのか
- 選択肢:AとBなど、上司が比較して選べる形にする
- 理由:それぞれを選ぶとどうなるのか、自分はなぜそう考えたのかを伝える
そして、話すときに意識してほしいのが「結論から伝える」ということです。
研修では、話を整理して伝える方法としてPREP法を紹介しています。
PREP法とは、結論(Point)、理由(Reason)、具体例(Example)、結論(Point)の順番で話す方法です。
| 順番 | 内容 | 言い出しの例 |
|---|---|---|
| P(Point) | 結論。まず伝えたいことを示す | 「結論から言うと」 |
| R(Reason) | なぜそう考えるのか、理由を伝える | 「なぜなら」 |
| E(Example) | 具体例や事例で裏付ける | 「例えば」 |
| P(Point) | 最後にもう一度、結論を伝える | 「だから」 |
時間があれば具体例を入れると、より伝わりやすくなります。時間がないときは、具体例を省いてもかまいません。
「結論はこう。なぜなら、こうだから」。
この順番を意識するだけでも、話は整理されやすくなります。
ただし、研修では必ずこうお伝えしています。
「日常のコミュニケーションで『結論は、結論は』と言ったら、めちゃくちゃ嫌われるので気をつけてくださいね。普通のビジネスのときだけですよ」と。
PREP法は、話すのが苦手な人や、話の途中で何を伝えたかったのか分からなくなってしまう人にも役立ちます。この順番で話を組み立てると、自分の中でも伝えたいことが整理されるからです。
結論が後回しになると、話す側も聞く側も「結局、何を伝えたかったのか」となりがちです。ビジネスの場では、まず結論から入ることを意識してみてください。
また、PREP法は会話だけでなく、報告書やチャットにも使えます。研修後の感想文やレポートも、この順番で書くと内容を整理しやすくなります。
上司への相談は「提案型」で、小さな一歩を示す
判断材料を持っていく考え方は、部下が上司に何かを頼むときにも活用できます。
私がおすすめしているのは、「提案型の相談」です。
例えば、「全部やってください」とお願いするのではなく、「こういうときには、まずこれをやってもらえませんか」と、小さな一つを具体的に示します。
何をしてほしいのかが明確になっていれば、上司も「やるか、やらないか」を判断しやすくなります。
相手によっては、正面からお願いすることが難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、普段の雑談の場で自分から話しかけ、少しずつ関係をほぐしておく方法もあります。
相手が判断しやすいように伝えること。そして、相手が受け入れやすい関係をつくっておくことも、円滑なコミュニケーションには大切です。
上司ができる3つの工夫|判断材料を持ってきやすい職場をつくる

ここまで、報連相をする側の工夫についてお伝えしてきました。
ただし、部下が判断材料を持ってこないのは、やり方を知らないからとは限りません。そもそも、上司に聞きにくい事情があることも考えられます。
私たちの研修を担当している別の講師も、「分からないことが分からない」という状態が、コミュニケーションの中ではよくあると話しています。
聞くのが億劫になる。聞いたら機嫌を悪くされそうで嫌だ。忙しそうで、今聞くのは申し訳ない。
そんな気持ちから、分からないことを聞かずに進めてしまうこともあります。
だからこそ、報連相をする側だけでなく、受ける側にも工夫が必要です。
ここでは、部下が判断材料を持ってきやすい職場をつくるために、上司が意識したい3つのことを紹介します。
報告を受けるときは「交通整理」をしながら聞く
報告を受ける側の聞き方にも、工夫が必要です。自分が聞きたいことだけを聞きに行くと、相手は話しにくくなってしまいます。
おすすめは、まず相手を落ち着かせ、「ここから進めようか」と、話を整理しながら聞くことです。研修では、これを「交通整理」と呼んでいます。
相手の話を受け止めながら、何が起きていて、何が問題なのかを一緒に整理していく。そうすることで、部下も安心して相談しやすくなります。
手を止めて、最後まで聞いてから判断する
部下の報告を、作業をしながら、手を止めずに聞いていないでしょうか。それでは、話を聞こうとする真剣さが伝わりにくくなります。
答えがすぐに浮かぶ相談ほど、時間を惜しんで話を途中で切り、すぐにアドバイスを返したくなるものです。
しかし、途中で話を切ってしまうと、相手が本当に伝えたいことにたどり着く前に、表面的な話だけで判断することになりがちです。
まずは、相手が話し終わるまで、途中で止めずに聞くこと。
上司がきちんと話を聞く姿勢を見せることで、部下も必要な情報を伝えやすくなります。
材料がないときは「AとB、どちらだと思う?」と聞き返す
部下が判断材料を持たずに相談に来たときは、上司のほうから選択肢を示して、考えてもらう方法もあります。
研修資料の講師用メモには、面談の工夫として「A or Bで想像させ、最終的には本人に選ばせること」と書いています。
大切なのは、上司がすぐに答えを渡してしまうのではなく、選ぶところを本人に残すことです。
「AとBなら、どちらがよいと思う?」
こう問いかけることで、部下自身が考え、判断する機会をつくれます。
また、相手の話をよく聞く力が伸びると、伝え方も変わってきます。相手のタイプや状況が分かり、その人に合わせた伝え方ができるようになるからです。
部下の報連相をよく聞くことは、リーダー自身の伝える力を育てることにもつながります。
部下に教えるときの3つの手順
ここまでの内容を、部下に報連相を教える手順に置き換えると、次の3つになります。
- 結論・選択肢・理由の型を、先に共有しておく
- 判断材料を持たずに来たら、「AとBなら、どちらがよいと思う?」と聞き返し、本人に考えてもらう
- 判断材料をそろえて相談に来たら、その場で判断して返す
大切なのは、最初から完璧な報連相を求めないことです。
まずは型を教え、実際の仕事の中で使ってもらう。材料が足りなければ問いかけ、考える機会をつくる。そして、きちんと材料をそろえて相談できたときには、その場で判断して返す。
こうした積み重ねが、部下の報連相を育てていきます。
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報連相は場数でうまくなる|チャットや報告書も練習の場に
伝える力は、スポーツと同じだと私は考えています。
話す機会を多くつくった人ほど、うまくなっていきます。反対に、苦手な人ほど、その機会を自分から手放してしまっていることがあります。
苦手だったら、素振りしようぜ。そんな感覚です。
話すことだけが練習ではありません。感想文やレポート、報告書、チャットも、伝える力を鍛える機会になります。
例えば、日々のチャットで結論から伝えることを意識する。報告書を書くときにPREP法を使ってみる。こうした小さな積み重ねが、話のまとめ方や伝え方の上達につながります。
リーダーにできるのは、部下が報連相を練習できる場面を増やすことです。朝の報告や日常のチャットでの連絡も、結論から伝える練習の機会になります。
研修では、コミュニケーションの原理原則を、次のように整理しています。
目的は「信頼関係を築くこと」。
そして、考え方は「相手に伝わったことが、自分が伝えたこと」。
自分が伝えたつもりでも、相手に伝わっていなければ、コミュニケーションが成立したとはいえません。
判断材料を持っていく報連相も、相手が判断しやすい形で伝えるための工夫の一つです。
明日からの報連相で意識したいこと
最後に、明日からの仕事で実践してほしいことをまとめます。
- 上司に相談するときは、「どうしたらいいですか」ではなく「AとBのどちらにしますか」と聞く
- 結論、理由の順に話す。時間がなければ具体例は省いてもよい
- 上司に何かを頼むときは、すべてをお願いするのではなく「まずこれを」と小さな一つを示す
- 部下には、結論・選択肢・理由を整理して持ってくる報連相を教える
- 報告を受けるときは、相手を落ち着かせ、話を整理しながら聞く
- 判断材料が足りないときは「AとB、どちらだと思う?」と聞き返し、本人に考えてもらう
- 報告書やチャットも含めて、日常の中で伝える機会を増やす
まずは一つ、できることから始めてみてください。
報連相の教え方に関するよくある質問
部下の報連相を改善したい管理職やリーダーの方に向けて、よくある疑問にお答えします。
まとめ|報連相は、相手が判断しやすい形で伝える
報連相がかみ合わないときは、まず聞き方や伝え方の形を見直してみてください。
「どうしたらいいですか」と上司に丸ごと判断を預けるのではなく、結論・選択肢・理由を整理して「AとBのどちらにしますか」と相談する。それだけでも、上司は判断しやすくなります。
また、部下に報連相を教える立場の方は、まず型を共有し、実践する機会をつくってください。判断材料が足りないときは選択肢を示し、本人に考えてもらうことも大切です。
報連相は、教えて終わりではありません。日々の仕事の中で繰り返し実践し、少しずつ身につけていくものです。
伝える側も、受け取る側も、お互いに判断しやすく、話しやすい関係をつくっていきましょう。
講師プロフィール
岡本 好市(おかもと こういち)

企業向け研修では、チームビルディング・コミュニケーションプログラムを主に担当し、業種・業界・階層問わず年間約100回以上の研修を実施。企業内での研修カリキュラムの仕組み構築や研修トレーナーの育成、新卒採用強化のコンサルタントとしても活躍している。
情熱を持って受講者に接し、モチベーション向上と前向きな行動変容を促せるよう研修を展開。顧客に寄り添い、成長をサポートする熱意あふれる指導者として多くの支持を得ている。




