若手社員向けハラスメント研修のポイント解説!効果的な進め方とは
近年、企業のコンプライアンス意識の高まりとともに、ハラスメント研修の重要性が増しています。
特に、これから組織の中心となっていく若手社員に対し、適切な知識と意識を身につけてもらうことは、健全な職場環境を維持するために不可欠です。
しかし、人事・研修担当者の方々の中には、「若手社員に特化した研修では何を伝えれば良いのか」「どうすれば研修が形骸化せず、実効性のあるものになるのか」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
若手社員向けハラスメント研修がなぜ重要なのか、そして研修を成功させるための具体的な内容や選び方のポイントについて詳しく解説します。
なぜ今、若手社員へのハラスメント研修が重要なのか?
管理職だけでなく、若手社員を対象としたハラスメント研修の必要性が高まっています。
その背景には、若手社員特有のリスクや、社会環境の変化があります。
単にハラスメントの知識をインプットするだけでなく、なぜ学ぶ必要があるのかを理解することが、研修効果を高める第一歩です。
| 研修の重要性 | 具体的なリスク | 研修によって期待される効果 |
|---|---|---|
| 無自覚な加害の防止 | 学生気分の言動、価値観の押し付け | ハラスメントに該当する言動の理解、他者への配慮の習得 |
| 過剰反応の回避 | 正当な指導への反発、指導側の萎縮 | 指導とパワハラの境界線の理解、健全なコミュニケーションの促進 |
| 新たなリスクへの対応 | リモートハラスメント、オンラインでの不適切言動 | 多様な働き方におけるリスクの認知、適切なオンラインマナーの習得 |
「無自覚な加害者」になるリスクを防ぐため
若手社員は、悪意なくハラスメントの加害者になってしまう可能性があります。
例えば、学生時代のノリで先輩社員のプライベートに踏み込みすぎたり、後輩やアルバイトスタッフに対して、自身の価値観を押し付けるような言動をとってしまったりするケースです。本人に悪気がないため、問題を自覚しにくいのが特徴です。
研修を通じて、どのような言動が相手を不快にさせ、ハラスメントに該当しうるのかを具体的に学ぶことで、無自覚のうちに加害者となるリスクを未然に防ぎます。
指導に対する「過剰反応」を避けるため
ハラスメントという言葉が社会に浸透した一方で、その定義を正確に理解していない若手社員も少なくありません。
その結果、上司や先輩からの正当な業務指導や注意に対して、「パワハラだ」と過剰に反応してしまうケースが見られます。このような状況は、指導する側の萎縮を招き、組織全体の成長を妨げる要因にもなりかねません。
研修では、業務上必要な指導とパワハラの境界線を正しく理解させ、適切なコミュニケーションを促進することが求められます。
多様な働き方における新たなリスクに対応するため
リモートワークの普及など働き方が多様化する中で、コミュニケーションのあり方も変化し、新たなハラスメントのリスクが生まれています。
例えば、業務時間外の過度な連絡や、オンライン会議でのプライベート空間の映り込みに関する不適切な発言などが挙げられます。
若手社員が知っておくべきハラスメントの基礎知識

若手社員向け研修を効果的に行うためには、まずハラスメントに関する正確な基礎知識を共有することが不可欠です。
ここでは、特に重要なパワーハラスメントの定義や、近年問題となっている多様なハラスメントの種類、そして多くの人が悩む「指導」との境界線について解説します。
厚生労働省が定義するパワーハラスメントとは
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場におけるハラスメントの代表例です。
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。
この定義を満たす具体的な3つの要素を明示しています。
研修では、この3つの要素を正しく理解させることが、パワハラへの認識を深める上で重要になります。
【参考資料】パワーハラスメントの定義について
多様化するハラスメントの種類一覧
現代の職場では、パワハラやセクシュアルハラスメント以外にも、様々な種類のハラスメントが問題視されています。
若手社員が知らず知らずのうちに加害者や被害者になることを防ぐため、これらの多様なハラスメントについて知識を深めることが大切です。
研修で取り上げるべきハラスメントの例を下の表に示します。
| ハラスメントの種類 | 内容 |
|---|---|
| マタニティハラスメント | 妊娠・出産・育児を理由とした嫌がらせや不利益な扱いをすることです。 |
| カスタマーハラスメント | 顧客からの理不尽なクレームや要求、暴言などの迷惑行為のことです。 |
| ロジカルハラスメント | 正論を振りかざして相手を執拗に追い詰め、精神的な苦痛を与えることです。 |
| リモートハラスメント | リモートワーク環境下での過度な監視やプライベートへの過剰な干渉などです。 |
| 逆パワーハラスメント | 部下が上司に対して行うパワーハラスメントのことです。 |
指導とパワハラの境界線はどこか
若手社員にとって、上司や先輩からの指導は成長のために不可欠です。しかし、その指導が「業務の適正な範囲」を超えた場合、パワハラに該当する可能性があります。
この境界線の判断は非常に難しい問題ですが、重要なのは「業務上の必要性」と「言動の相当性」です。
例えば、失敗に対して人格を否定するような暴言を吐くことは、業務上の必要性も相当性もなく、パワハラと判断される可能性が極めて高いです。
研修では、具体的なケーススタディを用いて、指導とパワハラの境界線について議論し、考える機会を設けることが有効です。
効果的な若手社員向けハラスメント研修の5つの内容
若手社員がハラスメントを「自分ごと」として捉え、行動変容につなげるためには、研修の内容を工夫する必要があります。
知識のインプットだけでなく、実践的なスキルを習得できるプログラムを組み込むことが、研修の効果を最大化する鍵となります。
| 研修内容 | 学習のポイント | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 定義・判断基準の学習 | 客観的な基準を基に知識を体系化します。 | ハラスメントへの正確な理解が深まります。 |
| ケーススタディ | 具体的な事例を通じて多角的に検討します。 | 実践的な判断力と多様な価値観への理解が養われます。 |
| コミュニケーション方法 | 相手を尊重する伝え方をスキルとして習得します。 | 無自覚な加害行為を予防し、円滑な人間関係を築けます。 |
| 対処法の学習 | 被害者・目撃者になった際の行動を学びます。 | 問題の早期発見と解決につながります。 |
| アサーションの習得 | 誠実かつ対等な自己表現スキルを身につけます。 | 健全な自己主張ができ、良好な人間関係を維持できます。 |
ハラスメントの正しい定義と判断基準の学習
まず基本となるのは、ハラスメントの正しい定義を理解することです。
特にパワーハラスメントについては、厚生労働省が示す「3つの要素」を基に、どのような行為が該当するのかを明確に学習します。
感覚的な理解ではなく、客観的な判断基準を学ぶことで、指導とパワハラの境界線についての理解も深まります。この基礎知識が、すべての学習の土台となります。
ケーススタディを通じた具体的事例の検討
職場でありそうな具体的な事例を用いたケーススタディは、若手社員の当事者意識を高める上で非常に効果的です。
例えば、「先輩から食事に誘われたが、断りにくい。これはセクハラにあたるか」「リモート会議で上司から部屋の中を執拗に聞かれる」といった身近な事例についてグループで討議させます。
これにより、ハラスメントのグレーゾーンについて考える力を養い、多様な価値観に触れる機会を創出します。
加害者にならないためのコミュニケーション方法
ハラスメントは、多くの場合コミュニケーションのすれ違いから生じます。若手社員が加害者にならないためには、相手を尊重するコミュニケーションスキルが不可欠です。
相手に何かを依頼したり、注意したりする際に、どのような言葉を選べば良いのかを学びます。
例えば、自分の意見を伝える際に「私はこう思う」と主語を自分にする「I(アイ)メッセージ」の活用法などを習得します。
被害者になった時・目撃した時の対処法
万が一、自身がハラスメントの被害を受けたり、同僚が被害に遭っているのを目撃したりした場合に、どう行動すればよいかを具体的に学ぶことも大切です。
企業の相談窓口の役割や利用方法、相談する際に記録しておくべきことなどを周知します。
適切な対処法を知っていることは、社員が安心して働ける環境づくりに直結し、問題の深刻化を防ぐことにもつながります。
良好な人間関係を築くためのアサーション
アサーションとは、相手のことも尊重しながら、自分の意見や気持ちを誠実に、率直に、対等に表現するコミュニケーションスキルです。
相手に一方的に意見を押し付けたり、逆に自分の意見を我慢したりするのではなく、健全な自己主張を行う方法を学びます。アサーションを身につけることは、ハラスメントを予防するだけでなく、風通しの良い職場づくりにも大きく貢献します。
若手社員向けハラスメント研修の選び方と3つのポイント
ハラスメント研修の効果は、どの研修プログラムを選ぶかによって大きく左右されます。
自社の課題や若手社員の特性に合った研修を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
研修選びで失敗しないための3つの重要なポイントを解説します。
研修の目的とゴールを明確にする
まず最初に、「なぜ若手社員に研修を行うのか」「研修を通じてどのような状態になってほしいのか」という目的とゴールを明確にする必要があります。
例えば、「無自覚な加害者をなくすこと」が目的なのか、「指導をパワハラと誤解しないようにすること」が目的なのかによって、選ぶべきプログラムは変わってきます。
目的を具体的に設定することで、研修会社との打ち合わせもスムーズに進み、より自社に合った提案を受けやすくなります。
研修形式(集合・オンライン・eラーニング)を選ぶ
ハラスメント研修には、講師と対面で行う「集合研修」、リアルタイムで配信される「オンライン研修」、録画されたコンテンツを視聴する「eラーニング」など、様々な形式があります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合わせて最適な形式を選択しましょう。
例えば、ディスカッションを重視するなら集合研修やオンライン研修、時間や場所の制約なく基礎知識を学ばせたいならeラーニングが適しています。
| 研修形式 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 集合研修 | 高い臨場感と一体感が得られ、受講者の集中力を維持しやすいです。 | 会場費や交通費などのコストがかかり、場所の確保が必要です。 |
| オンライン研修 | 場所を問わず参加でき、遠隔地の社員も同時に受講可能です。 | 通信環境に左右され、受講者の一体感を醸成しにくい場合があります。 |
| eラーニング | 個人のペースで繰り返し学習でき、コストを抑えやすいです。 | 受講者のモチベーション維持が難しく、質疑応答がしにくいです。 |
実践的で分かりやすいプログラムか確認する
法律や定義を説明するだけの座学研修では、若手社員の関心を引きつけ、行動変容を促すことは難しいでしょう。
前述したようなケーススタディやグループワークが豊富に含まれているか、若手社員がイメージしやすい身近な事例が使われているかなど、プログラムが実践的で分かりやすい内容になっているかを確認してみてください。
研修会社のウェブサイトで公開されているカリキュラム例を確認したり、導入実績を参考にしたりすると良いでしょう。
若手社員向けの研修選びで迷われている企業様には、ガイアシステムのハラスメント研修がおすすめです。
ガイアシステムの若手社員研修 では「わかる」で終わらない“実践型”を強みに、若手が現場で正しく行動できる力を育成します。
自社の課題に合わせたオーダーメイド研修も可能なため、効果的なハラスメント防止体制づくりに役立ちます。
ハラスメント研修を成功させるための注意点
質の高い研修プログラムを選んだとしても、その伝え方や研修後のフォローアップを誤ると、期待した効果が得られないことがあります。
研修を真に意味のあるものにするために、人事・研修担当者が心に留めておくべき注意点を解説します。
| 注意点 | 具体的な配慮 | 目的 |
|---|---|---|
| 「犯人捜し」の回避 | 研修の目的を明確に伝え、未来志向の場であることを強調します。 | 参加者が安心して学べる心理的安全性を確保するためです。 |
| 管理職との連携 | 組織全体の課題であることを伝え、管理職の関与を促します。 | 研修効果を職場に定着させ、組織風土の改革につなげるためです。 |
研修が「犯人捜し」にならないよう配慮する
ハラスメント研修の目的は、あくまでハラスメントを未然に防止し、誰もが働きやすい職場環境を作ることです。
過去の事例を挙げて特定の個人を非難したり、誰かを「犯人」として吊るし上げたりするような雰囲気になってはいけません。
研修の冒頭で、「この研修は個人の責任を追及する場ではなく、未来のより良い職場づくりのために全員で学ぶ場である」というメッセージを明確に伝えることが重要です。これにより、参加者は安心して研修に臨むことができます。
管理職も連携して取り組む重要性を伝える
若手社員だけがハラスメントについて学んでも、組織全体の意識が変わらなければ問題は解決しません。
若手社員が研修で学んだことを実践しようとしても、管理職の理解がなければ、職場の行動変容にはつながりにくいのです。
研修の際には、若手社員だけでなく管理職もハラスメント防止に責任を持ち、会社全体で取り組む課題であることを伝える必要があります。若手社員向け研修とあわせて、管理職向けの研修も実施することが、組織風土改革には最も効果的です。
若手社員向けハラスメント研修に関するよくある質問(Q&A)
まとめ
本記事では、若手社員向けのハラスメント研修が重要である理由から、効果的な研修内容、そして研修選びのポイントや成功のための注意点について解説しました。
若手社員がハラスメントに関する正しい知識を身につけ、相手を尊重するコミュニケーションを実践することは、ハラスメントのない健全な職場環境の実現に不可欠です。
この記事で紹介した内容を参考に、ぜひ貴社の状況に合った実りある研修を企画・実施してください。

ハラスメント研修カリキュラム
従業員をクレーマーから守り、組織の対応力向上を目指す!
カスタマーハラスメント研修|対応力強化

従業員に大きなストレスを与え、離職の原因にもなっているカスタマーハラスメント。個人の能力では解決できないケースも多く、組織が一体となってリスク回避することが必要です。
本研修はカスタマーハラスメントの理解と対応力を強化することを目的に、コミュニケーションスキルを学び、実践的なグループワークを通じて具体的な対策を考えます。
ハラスメントの未然防止、環境改善を目指す!
ハラスメント研修 |パワハラ防止対策

セクハラ、パワハラ、マタハラなど様々なハラスメントの定義や具体例、日常に潜むハラスメントリスクについて学びます。
「グレーゾーンと思われがちな事例紹介」やケーススタディを通じてハラスメントの識別方法を習得し、グループディスカッションで防止策を考案します。また、ハラスメントが起きた際の適切な対応方法や報告手順を身に着けます。
心のメンテナンス手法を習得
メンタルヘルス研修|ストレスと上手に向き合うには

メンタルヘルスに対する知識を身につけ、自分の心の状態を確認し、自らに合ったメンテナンス手法を習得していきます。
・メンタルヘルス研修 全従業員対象 基礎編
・メンタルヘルス研修 役職対象 ラインケア編
・メンタルヘルス研修 全従業員対象 セルフケア編
上記を事例に、内容別・対象別に様々な研修カリキュラムを取り揃えております。
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