管理職研修を企画するとき、「社内で実施するべきか、研修会社に依頼するべきか」と迷うことはありませんか。内製なら費用を抑えられそうですが、教材の作成や講師の準備には時間がかかります。一方、外注は費用が見えやすいものの、自社の課題に合った研修になるのか、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
判断が難しい理由の一つは、両者の費用や効果を同じ条件で比較しにくいことです。外注費用は見積書に明記されますが、内製にかかる人件費や準備時間は、通常業務の中に埋もれがちです。
大切なのは、内製と外注のどちらか一方を選ぶことではありません。研修の目的やテーマ、社内の体制、実施回数などを踏まえ、自社に合った方法を選ぶことです。
本記事では、管理職研修の内製と外注、それぞれに向いているテーマや費用の比較方法、組み合わせて実施する際のポイントを解説します。
すべてを内製・外注にするのではなく、テーマごとに考える
管理職研修の内製と外注を判断するときは、研修全体を一括りにせず、テーマごとに考えることが大切です。
管理職研修には、自社の制度や業務に関する知識から、部下の育成、目標設定、面談、チームマネジメントまで、さまざまなテーマがあります。それぞれ必要な知識やスキルが異なるため、適した実施方法も変わります。
例えば、自社の人事評価制度や運用ルールを管理職に説明する場合はどうでしょうか。
制度の目的や社内での運用方法、過去に起きた問題などを把握しているのは、人事担当者や社内の関係者です。こうした自社固有の内容は、社内で説明するほうが実情に即した研修にしやすいでしょう。
一方、部下との面談で本音を引き出す方法や、相手の成長につながるフィードバックの仕方を学ぶ場合は、専門的な知識と実践的な指導が求められます。
社内に面談が得意な管理職がいても、その人が持つ経験や感覚を、誰もが実践できるように体系立てて教えられるとは限りません。
このように、制度説明は内製、面談スキルは外注という分け方もできます。
まずは、研修を通じて何を実現したいのかを整理し、テーマごとに適した実施方法を検討しましょう。
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内製が向くテーマと外注が向くテーマ
内製と外注を分ける一つの目安は、社内に蓄積された知識を伝えることが中心なのか、それとも専門的な指導や新たな視点が必要なのかという点です。
内製が向いているテーマ
内製が向いているのは、自社固有の情報やルールを扱うテーマです。例えば、次のような内容が挙げられます。
- 人事評価制度の目的や運用ルール
- 自社の組織構造や決裁権限
- 自社の商品知識や業務プロセス
- 社内で起きたトラブルや対応事例の共有
- 自社の経営方針や行動指針の浸透
こうしたテーマは、社内の人事担当者や各部門の責任者が講師を務めることで、実際の業務に即した説明ができます。また、制度の変更や業務内容の更新に合わせて、教材を修正しやすいこともメリットです。
外注が向いているテーマ
外注が向いているのは、専門的な知識や実践的な指導、社外の視点が求められるテーマです。例えば、次のような内容です。
- 部下との面談やフィードバックの技術
- 目標設定や評価面談の進め方
- チームマネジメントやリーダーシップ
- ハラスメント防止や労務に関する専門知識
- 他社の事例や異なる視点を取り入れる研修
特に、社内の慣習や管理職自身のマネジメント方法を見直したい場合は、第三者の視点が役立ちます。社内では当たり前になっているやり方も、外部講師が問いを投げかけることで、新たな課題として見えてくることがあります。
もちろん、社内講師でもこうした研修は実施できます。ただし、受講者との関係性や社内の立場によっては、率直な意見を出しにくくなる場合もあるため、研修の目的に応じた設計が必要です。
迷ったときは、社内にそのスキルを持つ人がいるかだけでなく、知識や経験を整理し、他の人が実践できるように教えられる人がいるかという視点で考えてみましょう。
「自分でできること」と「相手ができるように教えること」は、必ずしも同じではありません。
内製にかかる費用は、見積書に表れにくい
内製を選ぶ理由として、費用を抑えられることを挙げる企業は少なくありません。
外部の研修会社に支払う費用が発生しないため、一見するとコストを削減できるように見えます。しかし、社内で研修を実施する場合も、担当者や講師の人件費、教材作成の時間などが必要です。
内製の費用を考える際は、主に次の4つを整理しましょう。
1. 教材の作成
研修の目的やカリキュラムの設計、スライドの作成、ワークの設計、講師用の進行台本などにかかる時間です。例えば、6時間の研修を一から設計する場合、教材作成に40〜60時間程度かかると仮定して費用を試算できます。
ただし、これはあくまで試算のための目安です。既存の教材を活用できるか、研修内容をどこまで作り込むかによって、必要な時間は変わります。
2. 講師の準備
社内の管理職や人事担当者が講師を務める場合、教材の読み込みや進行の確認、説明の練習などが必要です。
普段の業務に加えて準備を進めることになるため、本人の負担や業務への影響も考慮しましょう。
3. 当日の運営
会場の設営、受付、機材の準備、グループ分けなど、研修当日の運営にも時間がかかります。
オンライン研修でも、接続確認やグループワークの設定、参加者への案内などの業務が発生します。
4. 実施後の対応
アンケートの集計、受講者からの質問への対応、実施内容の振り返り、次回に向けた教材の改善なども必要です。
こうした作業を含めて考えることで、内製に必要な費用をより現実的に把握できます。
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内製と外注の費用を同じ条件で比較する方法
内製と外注の費用を比較するときは、研修会社に支払う金額だけでなく、社内で発生する人件費や受講者の拘束時間も含めて考えます。
例えば、受講者20名、研修時間6時間のケースで比較してみましょう。
内製の場合の試算
内製の場合の費用を、次の条件で計算します。
| 項目 | 作業時間・条件 | 費用 |
|---|---|---|
| 教材作成 | 50時間 | 20万円 |
| 講師の準備 | 15時間 | 6万円 |
| 当日の運営 | 2名×6時間 | 4.8万円 |
| 実施後の対応 | 8時間 | 3.2万円 |
| 受講者の人件費 | 20名×6時間 | 48万円 |
| 合計 | 82万円 |
※担当者・講師・受講者の時間あたり人件費を一律4,000円と仮定しています。会場費、印刷費などの実費は含んでいません。
この条件では、内製にかかる費用は82万円となります。
外注の場合の試算
次に、外部講師に1日50万円で研修を依頼するケースを考えます。
| 項目 | 条件 | 費用 |
|---|---|---|
| 外部講師への依頼費用 | 1日 | 50万円 |
| 事前打ち合わせ | 9時間×4,000円 | 3.6万円 |
| 会場費などの実費 | 仮定 | 5万円 |
| 受講者の人件費 | 20名×6時間×4,000円 | 48万円 |
| 合計 | 106.6万円 |
※講師への依頼費用は仮定です。実際の見積もりでは、研修内容や講師、準備の範囲などによって金額が異なります。
この条件では、外注にかかる費用は約106.6万円となります。
なお、外注費用に教材作成や打ち合わせが含まれている場合は、別途費用として重複計上しないように注意しましょう。
1人あたりの費用に換算すると?
受講者20名が6時間受講する場合、受講者の延べ受講時間は120時間です。この条件で比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 内製 | 外注 |
|---|---|---|
| 研修全体の費用 | 82万円+実費 | 106.6万円 |
| 受講者1人あたり | 4.1万円+実費の按分 | 約5.33万円 |
| 受講者1人・1時間あたり | 約6,833円+実費の按分 | 約8,883円 |
この試算では、内製のほうが費用を抑えられる結果になりました。
ただし、これはあくまで一つのケースです。実際には、研修会社への依頼費用、社内の人件費、準備時間、受講人数などによって結果は変わります。
また、内製の場合は、教材を作成するための時間が初回に多くかかる一方、2回目以降は既存の教材を活用し、改訂に必要な時間だけで実施できる可能性があります。同じ内容を継続して実施するのであれば、内製の費用面でのメリットは大きくなりやすいでしょう。
一方、単発の研修では、教材作成にかかる時間を1回の実施で負担するため、外注との差が小さくなることもあります。
費用を比較する際は、1回あたりの金額だけでなく、今後何回実施する予定なのかも含めて検討することが大切です。
内製で注意したい3つの問題
内製には、社内の事情に合わせて研修を実施しやすいというメリットがあります。一方で、費用以外にも注意しておきたい点があります。
1. 講師や教材が属人化しやすい
特定の管理職や人事担当者に研修を任せていると、その人の異動や退職によって、研修の継続が難しくなる場合があります。教材が残っていても、講師によって説明の仕方や伝える内容が異なれば、研修の質を維持することは容易ではありません。
内製を継続するのであれば、教材や進行台本を整備するとともに、複数の講師が担当できる体制をつくっておくと安心です。
2. 受講者が通常業務との区別をつけにくい
社内の人間が講師を務める場合、研修が日常業務の延長として受け取られることがあります。その結果、業務の連絡が優先されたり、研修中に別の仕事が気になったりすることもあるでしょう。
研修の時間を確保し、参加者が学びに集中できる環境を整えることが重要です。経営層や上長から研修の目的を伝え、参加する意義を共有しておくことも効果的です。
3. 既存のやり方を見直す機会が不足することがある
社内講師は、受講者と日常的に関わる立場だからこそ、率直な意見を伝えにくい場合があります。また、同じ組織で長く働いていると、社内では当たり前になっている考え方や行動に気づきにくくなることもあります。
管理職自身のマネジメント方法や組織の慣習を見直したい場合は、外部講師の視点を取り入れるのも一つの方法です。
大切なのは、内製か外注かという形式だけで判断せず、受講者が安心して考え、意見を交わし、これまでの行動を振り返れる場をつくることです。
外注するときに確認しておきたいこと
外部の研修会社に依頼する場合は、費用だけでなく、研修内容や実施後のフォローまで確認しておきましょう。
自社の課題に合わせてカスタマイズできるか
管理職研修では、受講者が自分の職場や部下のことを思い浮かべながら学べるかどうかが重要です。
一般的な事例を学ぶことにも意味はありますが、自社で起きている問題と結びつけて考えられると、学びを実務に活かしやすくなります。
事前のヒアリングで自社の状況をどこまで反映してもらえるか、カリキュラムの変更が可能か、追加費用が発生するかなどを確認しておきましょう。
研修後のフォローまで設計されているか
研修で知識やスキルを学んでも、職場に戻ってから実践する機会がなければ、行動の変化につながらないことがあります。
そのため、研修後の実践課題や上司との振り返り、一定期間後のフォローなども検討しておきたいところです。
例えば、研修後30〜90日を一つの目安として、学んだことを実践できているか、どのような課題が生じているかを振り返る方法があります。
外部の研修会社に依頼する場合も、研修後の取り組みをすべて任せきりにするのではなく、社内でどのように実践を支援するかを決めておくことが大切です。
内製と外注を組み合わせる3つの方法
内製と外注は、必ずしもどちらか一方を選ぶ必要はありません。両者の強みを活かして組み合わせることで、費用と研修効果のバランスを取りやすくなります。
1. 研修の前後を社内でフォローする
外部講師による研修の前に、社内から研修の目的や期待する行動を伝えます。研修後は、上司との面談や実践状況の振り返りを行います。
研修当日の指導は外部講師に任せながら、学んだことを職場で活かすための支援は社内で行う方法です。
2. テーマごとに内製と外注を使い分ける
例えば、評価制度や社内ルールの説明は内製で行い、面談スキルやリーダーシップ、チームマネジメントなどの研修は外注する方法です。
年間の研修計画を立てる際に、各テーマの目的と必要な専門性を整理しておくと、実施方法を決めやすくなります。
3. 外注から始め、段階的に内製へ移行する
社内に講師を育てたい場合は、最初の1〜2年は外部講師による研修を実施し、社内の候補者が研修設計や運営に参加する方法もあります。
ただし、外部講師の研修を見学するだけで、同じ内容を再現できるとは限りません。教材の使用許諾や講師育成の支援範囲を確認し、必要に応じて社内講師向けの指導を依頼しましょう。
自社の状況に合わせて段階的に移行することで、研修の質を維持しながら、内製化を進めやすくなります。
内製か外注かを判断するチェック項目
ここまでの内容を踏まえ、実際に判断するときは、次の項目を確認してみましょう。
- 研修の目的と、受講者に身につけてほしいことが明確になっている
- 自社固有の情報を扱うテーマか、専門的な指導が必要なテーマかを整理できている
- 同じ研修を今後も繰り返し実施する予定がある
- 社内に、知識や経験を体系立てて教えられる人がいる
- 講師や教材が特定の人に依存しない体制をつくれる
- 教材作成や準備に必要な時間を確保できる
- 受講者が研修に集中できる環境を整えられる
- 研修後の実践や振り返りまで計画できている
自社固有の内容を扱い、継続的に実施する予定があり、講師や教材を維持できる体制が整っている場合は、内製が有力な選択肢になります。
一方、専門的な指導が必要な場合や、社内だけでは新しい視点を取り入れにくい場合は、外注や組み合わせを検討するとよいでしょう。
どの方法が適しているかは、研修の目的や社内の体制によって異なります。まずは、自社が解決したい課題を整理することから始めてみてください。
ガイアシステムの管理職研修でできること
ガイアシステムでは、企業ごとの課題や育成方針に合わせて、研修内容を設計するオーダーメイド研修を提供しています。
管理職研修では、一般的な知識を学ぶだけでなく、実際の職場で起きている課題や、管理職が直面している悩みを踏まえてカリキュラムを検討することが大切です。
ガイアシステムでは、事前のヒアリングを通じて、組織の状況や受講者の課題を把握し、実務に結びつく研修を設計します。導入実績は2,000社以上です。
内製と外注を組み合わせたい場合も、研修の目的や実施回数に応じた進め方をご相談いただけます。
また、継続的な研修を検討している企業には、定額制オンライン研修「ナレキャン」という選択肢もあります。
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単発の研修だけでなく、複数回の研修を通じて管理職の成長を支援したい場合にもご活用いただけます。
内製と外注のどちらが適しているかは、受講人数や実施回数、研修内容によって変わります。費用だけでなく、準備にかかる時間や研修後のフォローも含めて、自社に合った方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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よくある質問
まとめ|自社に合った方法で、管理職の成長を支える
管理職研修を内製にするか外注にするかは、研修全体で一律に決めるのではなく、テーマや目的ごとに考えることが大切です。
自社の制度や業務に関する内容は内製が向いている場合があり、専門的な指導や社外の視点が必要なテーマは外注が有力な選択肢になります。また、研修の前後を社内でフォローするなど、両者を組み合わせる方法もあります。
費用を比較するときは、外注費用だけでなく、内製にかかる教材作成や講師の準備、当日の運営、実施後の対応なども含めて考えましょう。実施回数や受講人数によっても、適した方法は変わります。
そして、忘れてはならないのが、研修は実施すること自体が目的ではないという点です。管理職が学んだことを職場で実践し、部下との関わり方やチームのあり方が少しずつ変わっていくことが、研修の大切な目的です。
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