成功循環モデル(組織の成功循環モデル)
成功循環モデルとは、「関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質」という4つの要素を好循環させ、組織を持続的な成功へ導くフレームワークです。
このモデルは、MIT組織学習センター共同創始者であり、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏によって提唱されました。組織の状況を動的に捉え、より良い組織を生み出す手法として、組織開発に広く活用されています。
特に、「数字だけを追いかけても成果が出ない理由」を明らかにした点が注目されています。

成功循環モデルの基本構成から実践方法、ビジネス現場での活用事例までをわかりやすく解説します。
成功循環モデルとは
短期的な成果を追い求めるだけのマネジメントは、やがて人材の疲弊や組織力の低下を招きます。そこで注目されているのが、この成功循環モデルです。リーダーやマネージャーが関係性を大切にすることで、健全な思考が育ち、行動が変わり、結果が持続的に高まっていきます。
実際、多くの管理職やリーダーは「成果=数字」と考えがちです。もちろん、組織を維持するために数字は欠かせません。しかし、結果ばかりを追い求めるあまり、かえって目標を達成できないという逆効果に陥るケースも少なくないのです。
成功循環モデルの基本構成(4つの質)
成功循環モデルは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏が提唱した組織論です。
「関係の質 → 思考の質 → 行動の質 → 結果の質」という4つの質の循環を通じて、組織がどのように成功に導かれるかを説明しています。
テーマ | 詳細 |
---|---|
| 信頼や心理的安全性がある関係性 ・押しつけられない関係 ・オープンにコミュニケーションができる ・信頼がある、垣根がない |
| 多様な意見や創造的なアイデアが生まれる状態 ・理解が浸透している ・良い質問が出る ・アイデアがたくさん出る |
| 積極的かつ効果的な行動がとれる状態 ・積極的に行動し、効果的な行動をとる ・新しい行動が生み出される、仕組みや規範が変わる |
| 組織目標や成果が持続的に達成される状態 ・組織目標の達成 ・高い成果・業績 |
この4つは相互に連鎖しており、良いサイクル(グッドサイクル)を回せば成果が高まり、悪いサイクル(バッドサイクル)に陥ると停滞や失敗につながります。
成功循環モデルが提唱された背景
キム氏はシステム思考の研究を通じて、「同じ戦略をとっても成果に差が出るのはなぜか」を考えました。その結論として、成果は行動だけでなく、人間関係や認識の質によって大きく左右されることがわかりました。この考え方は、数字偏重の経営から、人と組織の質を高める経営への転換を促しています。
「グッドサイクル(好循環)」と「バッドサイクル(悪循環)」
「組織の成功循環モデル」は、組織を成功に導くための「見えないチカラ(質)」を示すフレームワークです。
このモデルでは、組織は 「グッドサイクル(好循環)」 と 「バッドサイクル(悪循環)」 のいずれかに入りやすく、どちらのサイクルを選ぶかによって成果が大きく変わるといわれています。
多くの組織は「結果が変われば関係性も良くなる」と考えがちです。しかし実際には、関係の質を高めることが起点となり、その結果として思考の質・行動の質が改善され、持続的な成果につながっていきます。

成功循環モデルが示す本質は「結果からではなく、関係性から変えていくこと」にあるのです。

- グッドサイクル
信頼関係 → 建設的な思考 → 効果的な行動 → 良好な結果 → 信頼がさらに深まる - バッドサイクル
不信感 → 否定的思考 → 消極的行動 → 望ましくない結果 → 不信が増幅
成功循環モデルをビジネスで活かす意義
数字だけを追うマネジメントの限界
- 短期的には成果を出せても、数字ばかりに注目するマネジメントはリスクがあります。
- 組織の疲弊や離職率の上昇を招くことが少なくありません。
- 成功循環モデルは、人間関係の質を起点に成果を持続させるためのフレームワークです。
- 特に変化の激しい現代のビジネス環境では、この考え方が重要です。
「関係の質」が組織成果に直結する理由
- 関係の質が高まると、心理的安全性が確保されます。
- メンバーは安心して意見やアイデアを出せるようになります。
- その結果、以下のような成果が表れます。
- 業務改善のアイデアが増える
- 新しい挑戦やイノベーションが生まれる
- チーム全体のパフォーマンスが向上する
リーダーが意識すべき思考・行動のポイント
こうした取り組みが、メンバーの主体性を引き出し、組織全体の成果向上につながります。
単に「結果を出せ」と指示するのではなく、問いかけや傾聴を通じて関係性を築くことが大切です。
具体例:
・会議でメンバーの意見を一つひとつ確認する
・小さな成功や工夫を言葉で承認する
成功循環モデルの原則と4つの質
関係の質 ― 信頼と心理的安全性の土台づくり
- 挨拶や感謝を日常的に伝える
- 立場にとらわれないフラットな対話を行う
- 相手の意図を理解しようと努める
思考の質 ― 創造的なアイデアと学習文化
- 良質な問いを投げかける
- 複数の視点や意見を尊重する
- 短期成果より学習のプロセスを評価する
行動の質 ― 前向きな挑戦と仕組み改善
- 小さな実験を積み重ねる
- 失敗を学びに変え、改善を続ける
- 個人プレーよりチーム行動を重視する
結果の質 ― 持続的な業績と成果
売上やKPI達成にとどまらず、
- 組織文化の定着
- 離職率の低下
- 顧客満足度の向上
といった長期的な成果が組織の真の力になります。
成功循環モデルを導入するステップ
成功循環モデルを組織に取り入れるには、単に理論を理解するだけでは不十分です。
実務で成果につなげるためには、現状の課題の把握 → 目標設定 → 関係性の強化 → フィードバックの習慣化というステップを踏むことが重要です。
現状の課題と組織文化を分析する
- 何が機能していないのかを明確にする
- アンケートや1on1で関係性の現状を可視化する
共有できる目標を設定する
- 単なる数値ではなく、**組織の存在意義(パーパス)**に基づいた目標を掲げる
オープンなコミュニケーションを促進する
- 定期的な振り返りや対話の場を持つ
- 安心して意見を出せる心理的安全性を整える
フィードバックと改善サイクルを回す
- 「行動 → 振り返り → 改善」のサイクルを習慣化する
- 成功も失敗も組織で共有し、学びを積み重ねる
成功循環モデルの実践事例
成功循環モデルは、実際の組織でも成果を高めるために活用されています。
ここでは、関係性の改善や行動の質向上を通じて、具体的な成果につながった事例を紹介します。
チームマネジメントでの活用例
課題:営業チームでは、個々の成果は出ていたものの、メンバー間の連携や感謝の文化が不足していました。
施策:週次ミーティングで成果発表と感謝の共有を取り入れました。
結果:関係性が強化され、チーム全体の成果が安定的に向上しました。メンバーのモチベーションも持続的に高まりました。
人材育成・研修での応用例
課題:新任リーダーは部下との信頼関係が築きにくく、若手社員の離職が課題でした。
施策:研修で傾聴を重視したコミュニケーションを実践しました。
結果:関係性が改善され、若手社員の定着率が向上しました。リーダー自身の指導力も強化されました。
組織改革・DX推進での成功パターン
課題:部門横断プロジェクトでは、心理的安全性が不足していたため、アイデアの提案が少なく、改革が停滞していました。
施策:心理的安全性を意識したファシリテーションを導入しました。
結果:革新的なアイデアや改善提案が多数生まれ、組織改革・DX推進が加速しました。チームの協力体制も強化されました。
成功循環を阻害する要因
組織がグッドサイクルを回せず、成果が持続しない背景には、典型的な阻害要因があります。
ここでは特に注意すべき4つのポイントと、具体例を紹介します。
固定観念や上下関係へのこだわり
- 課題:「上司は常に正しい」「部下は従うべき」といった考え方
- 影響:意見が出にくくなり、改善や問題提起が滞る
- 具体例:会議で部下が提案を避けるため、新しい施策が実行されない
コミュニケーション不足
- 課題:情報が十分に共有されない状態
- 影響:誤解や不信感が積み重なり、意思決定や協力が阻害される
- 具体例:部署間で目標認識がズレ、プロジェクトが遅延する
個人主義や部門最適の強調
- 課題:「自分の成果だけ」「部署の成果だけ」を優先
- 影響:全体最適が損なわれ、チームワークが弱まる
- 具体例:営業部が自部門の売上だけに注力し、製造部との連携不足で納期に遅れが出る
短期的利益への過度な偏重
- 課題:「今期の数字」だけを重視
- 影響:長期的な成長や人材育成がおろそかになる
- 具体例:短期売上重視で研修や育成を削減した結果、中堅社員の離職率が上昇
まとめ ― 成功循環モデルを実務に活かすために
循環モデルは、成果を追うあまり人間関係が疎かになりがちな現代の組織にとって、重要な指針となります。
「関係の質」を改善することが、思考・行動・結果のすべてを底上げします。
まずは小さな関係改善の取り組みから始め、グッドサイクルを組織に根付かせていきましょう。
ガイアシステムでは、循環モデルを活用した組織改善研修も行っています。お気軽にご相談ください。
2,000社以上の、さまざまな業界の企業に研修導入をいただいています。












































